再考保育(1)経済負担減るけれど…子育て現場、歓迎と困惑

ピアノに合わせて踊る子供たちのイラスト
@Sさま
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10月の消費税増税に合わせて始まる幼児教育・保育の無償化。今月召集予定の通常国会で審議される。子育て世帯にとっては経済的負担が軽減される一方、待機児童の解消が遅れる可能性があるなど無償化の“しわ寄せ”が潜んでいる。無償化を前に、子育て世帯や保育現場が「目を向けて」と願うニーズを探った。

「実現すれば助かる」。静岡県内の子育て支援センターで、幼児教育・保育の無償化について尋ねると、第一声はほぼ共通していた。県東部の主婦(31)もその一人。県外で働いていたが、結婚のために退職し、不妊治療を経て長男(1)を授かった。行政の補助金を利用しても、自費で約100万円かかった。2人目も希望し、クリニックで卵子を凍結している。今後の治療や子育てにかかる費用を考えると、「無償化のスタートは心強い」。
ただ、親たちに不安がないわけではない。2018年4月時点の保育所などの待機児童数が97人と県内最多だった浜松市。長男(1)の育児休業中の保育士(31)=同市=は「無償化になるといっても、そもそも、子どもが確実に入園できなければ意味は無い」と感じている。周囲には、今春の仕事復帰を控え、入園できるかどうか切羽詰まったママ友たちがいる。自身の職場も保育士が不足気味で、年々多忙化しているのが気がかりだ。「施設整備や保育士の待遇改善。優先すべきことはいくらでもある」と訴える。
同市は待機児童解消のため施設整備に取り組み、19年度には私立保育所の新設などにより定員を前年度より550人増やすという。市幼児教育・保育課は「無償化により、保育需要はさらに高まると考えているが、影響の出方は不透明」と動向を注視している。

保育の現場で奮闘する保育所などの園長たちに無償化はどう映るのか。
こぐま保育園(静岡市葵区)の上條桂子園長は「お金を低所得世帯の支援に回すべき」と主張する。保育料は所得に応じて金額が決まる応能負担で、現在も生活保護世帯は負担がない。ただ、比較的少額の保育料であっても、生活の大きな負担になる厳しい家庭もあるという。無償化の対象は3~5歳児は原則全世帯だが、0~2歳児は住民税非課税世帯。「0~2歳児で無償化になる低所得階層の範囲を広げるほうが先なのでは」と疑問を投げかける。
認定こども園「あおぞらキンダーガーデン」(同区)の岡村由紀子園長は「無償化の政策には“子どもの視点”が抜けている。子どもに届くお金の使い方をしてほしい」と指摘する。
現場では、子どもへの長時間保育の影響が課題になっている。一日の半分に近い時間を園で過ごす子どもたちの思いと発達を考え、より良い保育を試行錯誤する。その上で、「社会にも親子の時間を保障してほしい。例えば、親を早く帰らせるための人員確保に取り組む企業に、補助金を出すなどできないか」と提案する。

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