受け皿確保も保育士不足

認可保育所のイラスト
読売新聞さま
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◇待機児童数 岡山市ワースト2

待機児童数が全国の自治体でワースト2の岡山市が、汚名返上に苦慮している。保育園新設などで受け皿を拡充したものの、保育士の数が足りていない。担い手を増やすため、給与に補助金を上乗せしたり、資格を持ちながら職を離れている「潜在保育士」の支援などに乗り出したりしているが、待機児童ゼロへの道のりは険しい。(岡信雄)

◇「潜在保育士」支援など取り組み地道に

「久しぶりで心配だったけど、やっていくうちに保育の流れを思い出せた」

1月30日、岡山市北区の三門保育園。市が主催する潜在保育士を対象にした1日保育実習体験会に参加した主婦(47)はそう話した。

資格を取ったのは二十数年前。これまで保育施設で働いた経験はない。家庭の子育てが一段落し、「何か仕事を」と考えて訪れたハローワークで、保育士を紹介されたという。

この日の体験会に参加したのは、この主婦を含めて3人。最初は子供の顔色をうかがっていたが、絵本を読んだり、園庭を一緒に駆け回ったりするうちに打ち解けた様子だった。

市の担当者は「子供の成長を感じられるやりがいのある仕事。何とか保育士になってほしい」と話した。

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岡山市の2018年4月時点の待機児童数は551人。前年同期比で298人減らしたものの、17年に続いて全国ワースト2位の水準で、全国最悪の兵庫県明石市(571人)との差も20人と近接している。

20年4月1日での待機児童ゼロを目標に掲げる岡山市では、保育園や認定こども園の新設に加え、民間企業の従業員向け保育施設を地域の子供たちも活用できるようにした「企業主導型保育事業所」の開設も推進。今年春には、入園申し込み(1万8428人)を上回る1万8844人分を確保できる見込みになった。

ところが保育士不足で、児童を定員いっぱいまで受け入れられない施設があり、市の試算では、保育士をさらに240~250人確保する必要があるという。

岡山労働局によると、県内の保育士の有効求人倍率(18年12月)は、全職種平均の2・00倍を上回る2・22倍。781人の求人に対して求職者は352人にとどまっている。

課題の一つが待遇面。岡山市では17年度から私立認可保育施設で働く保育士の給与を補助する事業を始めたが、そもそも他の職種と比べて給与が低いうえ、都市間での人材争奪戦も激しくなっている。首都圏では、地方と比べて高い給与水準に加えて、海外研修などの好待遇をアピールして呼び込む保育施設もある。

環太平洋大学の村田久教授(教育社会学)は「ここ2、3年は就職先に東京を選ぶ学生が増えている。県内の保育士の待遇も少しずつ上がってはいるが、東京優勢の傾向はしばらく続くのではないか」と指摘する。

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そんな中、市が着目しているのが、保育士の資格があっても現在は保育施設で働いていない潜在保育士の就職や復職のサポートだ。

県が17年に県内の保育士登録者(30~59歳)約1万5000人を対象に実態調査を実施した結果、回答した約4200人のうち、約15%が職に就いていなかったという。

市では18年度に入って、保育実習体験会を8施設で展開。20~60歳代の21人が参加したが、保育施設への就職が決まったのは4人にとどまっているという。

大森雅夫市長は「(県都の)岡山市としては、待遇を競うような自治体間競争には参加しにくい。地道に取り組んでいくしかない」と話す。市内では6日、保育士として就職を希望する人を対象にした就職面接会が開かれる。

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