保育士獲得、神戸と隣接市で競争過熱 一時金相次ぎ上積み 現場は負担軽減へ電子化推進

貯金に成功した人のイラスト(女性)
神戸新聞さま
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保育士の負担軽減や保育の安全性確保などの観点から、情報通信技術(ICT)機器を活用する保育施設が増えている。神戸市内では保育記録などをタブレット端末で入力し、業務のペーパーレス化に踏み切った施設も。こうした流れを保育士不足の解消につなげようと、同市は2019年度から機器導入費用の補助を始める方針。(石沢菜々子)

同市垂水区の幼保連携型認定こども園「花の森」。午睡中の乳幼児クラスで、5~10分置きに保育士が子どもたちの顔色や呼吸を確認し、手元のタブレット端末に入力していく。午睡に限らず、園児の日中の様子を保育士が端末に入力。保護者はわが子の様子をスマホなどで確認できる。

同園を含め神戸市内など14カ所の保育施設を運営する社会福祉法人みかり会(兵庫県南あわじ市)は17年度に独自のシステムを導入した。以前は同じ内容を園の記録や保護者への連絡、行政への報告-などとしてそれぞれの様式で記入していた情報を一元化。入力項目を工夫するなど「保育士の気づきを促す仕組みを取り入れた」(同法人)という。

同法人では、神戸市内の保育施設の常勤保育士の離職率が、17年度の14%から18年度は4%と大幅に改善した。谷村誠理事長(56)は「市や法人独自の待遇改善策の効果がある」とした上で、「ICT化で保育士が子どもとじっくり向き合うことができ、保育の面白さややりがいが伝わりやすくなった」と話す。

神戸市の調査では、ICT機器を何らかの形で活用する民間の保育施設は約7割に上る。同市は19年度から、事務の効率化や子どもの登降園管理などの機器導入に対し、1施設当たり最大100万円を補助。午睡時のチェックに使う補助機器導入も支援(同50万円)する方針。3年間で希望する施設での導入率100%を目指す。

一方で同市は、みかり会のような先進事例を参考に、複数の保育施設からの報告を一元化できるシステム構築も目指す。19年度当初予算案に調査費を盛り込んでおり、担当者は「保育士やシステム開発事業者らと連携しながら、ICT機器の効果的な活用法を検討したい」としている。

■保育士確保へ、自治体間で競争“過熱”
神戸市は2019年度、市内の保育施設や幼稚園に勤務する市内在住者を対象に、奨学金の返済支援制度を設ける。1人月5千円を上限に7年間支給し、学生時代に借りた奨学金を返済しながら働く保育士らの負担を軽減する。市内在住者に限定することで人口増にもつなげる狙い。

同市は保育士らに7年間で最大160万円の一時金を支給しており、対象者にとっては実質的な補助金の増額になる。

保育士らへの一時金制度を巡っては、神戸市が18年度当初予算案で、7年間で140万円の支給を打ち出すと、明石市が150万円に上積み。対抗するように、神戸市は昨年9月の補正予算で160万円に引き上げた。芦屋市も19年度予算案で160万円への引き上げを打ち出すなど、自治体間の保育士獲得競争が過熱している。

神戸市ではこのほか、最長5年間の家賃補助や保育士資格試験の学費に最大15万円を補助するなどの人材確保策に取り組む。

同市の調査では、18年度の正規保育士の離職率に改善傾向があったといい、同市こども家庭局は「さらなる待遇改善で、定着促進にも力を入れたい」としている。(石沢菜々子)

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