くらしQ:ベビーシッター 質向上へ短大が養成 /九州

本をよむ保育士の先生とこども(ソフト)

毎日新聞
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 保育士や幼稚園教諭を養成している北九州市小倉北区の東筑紫短期大学が、保育士の資格を持つベビーシッターを養成する授業を今年度、始めた。病気や産後の母親の支援、病後児保育など、ベビーシッターのニーズが高まっていることを受けた動きだ。需要が高まる一方で、利用者にも事業者選びなどで注意が必要となっている。【高芝菜穂子】

 ◇専門性や資格が大切

 ベビーシッターの資格が取得できる東筑紫短大保育学科の「在宅保育論」の演習に、約80人の受講生が参加した。その中に、5児の母親、池田悠貴さん(30)=同市小倉南区=の姿もあった。演習では、病後児のケアやオムツ替えの仕方を学ぶ。池田さんは「大丈夫よ。お熱どれくらいあるかな」と優しく病後児役の園児に声をかけながら体温を測り、園児の手を握った。
 大の子供好きの池田さんは、保育士やベビーシッターの資格を取得して働こうと、今年度から通っている。出産後に苦労した経験もある。第1子の産後9日目で39度の熱を出しながら、授乳や夜泣きに対応したり、胃腸炎で病院のベッドに子供を同伴して点滴をしたり……。ベビーシッターがいたら助かったと思う場面は少なくない。「少しの助けで気持ちも楽になるはず。授業で学ぶことで、子育ての考え方や子供への声かけの仕方も変わり、子供からも『ママ優しくなったね』と言われた。子育ての経験に加え、専門性を身につけて人の役に立ちたい」と話す。
 同短大が、ベビーシッターの養成に乗り出した背景には、保育のニーズが多様化し、保育所や幼稚園といった集団の保育だけでなく、在宅での保育も求められるようになった社会の変化がある。一方で昨年、埼玉県富士見市で自称ベビーシッターの男に預けられた男児が死亡する事件も発生した。同短大保育学科長の木本節子教授は「保育士の資格を持った質の高いベビーシッターを養成することは、社会のニーズに合うものだ。在宅保育について学ぶことは、保育者としての専門性をより高めることにもつながる」と語る。
 現在、ベビーシッターの公的な資格はないが、訪問保育サービスの事業者や、保育士の養成校などで構成する公益社団法人「全国保育サービス協会」が資格認定や研修をしている。同短大は、協会の「認定ベビーシッター資格取得指定校」となっており、在宅保育の授業を履修し、保育士の資格も取得した学生は卒業時、協会の「認定ベビーシッター」の資格を得られる。 協会は、保育士養成校との連携を進めており、全国で46校(8月末現在)がベビーシッターの資格取得指定校となっている。九州・山口では、東筑紫短大を含め福岡県で4校、山口県で1校ある。

 ◇信頼性で選ぶ

 利用者のベビーシッター選びはどうしたらいいのだろうか。厚生労働省は事業者の信頼性を重視し、協会加盟事業者のリスト(http://www.acsa.jp/htm/joining/)を活用することを呼びかけている。協会には、ベビーシッターへの教育や賠償責任保険を備えているかといった審査を通らなければ加盟できない。
 厚労省は、利用する場合▽事前の面接で信頼できる人物か確認し、本人に子供を預ける▽事業者名、氏名、住所、連絡先、保育場所、資格登録証、保険の加入、緊急時の対応を確認する▽預けている間も子供の様子を電話やメールで確認する▽保育内容の報告を受ける▽不満や疑問は事業者にすぐ相談する−−ことなども注意喚起している。

 ◇公的補助少なく

 協会加盟事業者の1時間あたりの平均利用料金(東京以外)は日中で約1600円。早朝や夜間は割り増しになる傾向がある。国と企業の負担で1回につき1700円の割引券が発行される補助事業があるが、利用できるのは特定の212社(7月末現在、協会ホームページに掲載)の従業員に限られる。
 福岡市は「産休明けサポート事業」で、産休明けから保育所に入所可能になる生後3カ月までの子供のためのベビーシッター費用(1時間1200円)のうち、900円を市が助成している。
 ★取材してひとこと
 東筑紫短大の木本教授は「ベビーシッターには、子供の命と心を託すのだから、専門性を学んだ資格や免許が大切だ」と話す。質の高いベビーシッター養成の動きが広がる一方で、利用料の負担の大きさから、事件後もインターネット上のマッチングサイトへは、割安でベビーシッターを求める書き込みが続いている。自治体は利用者への補助など、在宅での多様な保育ニーズに応える事業に力を注いでほしい。
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