アベノミクス危険な実態 新3本の矢/保育所突然休止「無責任だ」/すすむ営利企業参入 保育士いっせい退職

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安倍首相は、新たに掲げた「新3本の矢」で「夢をつむぐ子育て支援」を掲げ、保育所の増設を打ち出しています。しかし、保育所が突然休業し、子どもたちがほうり出される事態が起こっています。安倍政権は4月から新しい保育制度をスタートさせましたが、矛盾と行き詰まりに陥っています。
 (鎌塚由美)
 東京都江東区の幹線道路沿いのマンション1階にあった「認証保育所」のK園(定員30人)が1日から休止しました。都内に8カ所の施設を持つ株式会社が運営していましたが、昨年秋、別のA社が会社ごと買収。保育内容の変更や保育料の値上げが打ち出され、給料の遅配も起こり、保育士全員がいっせいに退職。代わりの職員も定着せず、運営できなくなったからです。
 子どもたちは散り散りばらばらに転園していきました。4歳男児の父親(39)は、「当初、10月から休止すると3日前に告げられ驚きました。もうここには預けられないと思いましたが、空きがなく、10月になってようやく離れた所にみつかりました。慣れ親しんだ先生がいなくなって息子はチック症(神経疾患)になり、家族の生活も振り回されました。会社は保育を何と考えているのか。あまりに無責任です」と憤ります。
 A社は「二度とこうした事態にならないようにしたい」と話しますが、文京区にある同社の認可保育所でも職員が大量に辞め、来年4月の1次募集を休止する事態になっています。しかし、同社は「方針に合わない人がやめていった。代わりは確保している」と説明します。社長は、「5年以内に国内外に100施設を達成する」と拡大を推進していく構えです。
 認証保育所は、「企業の経営感覚の発揮」を掲げて、東京都が待機児童対策として2001年に導入しました。現在約1万人が通います。国の基準より低いものの、国は認証保育所に入所していれば待機児童に数えないことにするなど、保育政策に事実上、組み込んできました。
 毎年1000人の定員増を掲げる江東区では企業参入を進め、認可・認証あわせた定員の半分以上が株式会社の保育園です。
 A社の保育施設で勤めていた元保育士は「安心して預けられてこそ第2子、第3子が産めます。子どもも保育者も守れない保育園では、少子化に拍車をかけるだけです。安心・安全の保育園を増やすために、行政は役割を果たしてほしい」と話します。しかし、都は「安定的運営へ引き続き指導を行う」と述べるだけです。
 日本共産党の畦(あぜ)上(がみ)三和子都議は、「企業買収で実質的に運営主体が変わっても届け出だけです。きちんと運営できるか検討し、厳しくチェックすべきです」と指摘。「保育の質を軽んじることが保育士不足もいっそう加速させています。無批判に営利企業を増やしてきた姿勢を検証すべきです」と話します。

待機児ゼロどころか民間任せで行きづまり

 各地で来年度の認可保育所入所を求める声が広がっています。
 練馬区の保育問題協議会が15日に入園問題について開いた会合には認可保育所入所を希望する保護者が多数つめかけました。
 「認証保育所に入っていたことがポイントとなり、ようやく認可保育所に入れた」などの実態が出され、「認可保育所に入るための点数稼ぎのようになっているのはおかしい」「安心して預けられる認可保育所を増やすために声をあげよう」との声が出されました。
 安倍政権は、待機児童解消加速化プランで19年度末までに40万人分の「受け皿」確保を掲げ、「新3本の矢」でさらに10万人分を増やすとしています。
 新制度では保育士のいない施設も認可し、株式会社による補助金の使途制限も認可保育所でなければ撤廃するなど、営利企業の参入を拡大させました。それでも15年度の待機児童は1796人増の2万3167人となり、「待機児童ゼロ」は看板倒れです。
 保育研究所の村山祐一所長は、「株式会社は営利追求が目的であり、それができないと撤退なども自由で、安定・安心の保育にはなじまないものです」と指摘します。「新制度でつくられた認定こども園や小規模保育所では、保護者と直接契約となるため、事業者が突然変わることも起こりえる」と述べ、「民間任せのやり方が矛盾を深めている」と指摘します。
 「新制度では、児童福祉法24条1項が残り、公的保育が維持されました。国は、児童福祉法24条1項に基づく、公的保育の責任にしっかり立ち返り、保護者の求めている認可保育所の抜本的増設、抜本的な処遇改善による保育士確保に責任を果たすべきです」
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