2016/12/06

JPホールディングスの17年3月期は保育士待遇改善先行して減益予想だが、海外展開も推進して中期成長期待


財経新聞様
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JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。17年3月期は保育士待遇改善を国に先行して実施するため減益予想だが、待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はない。また新タイプ学童クラブ「AEL」や海外展開も推進し、中期的に収益拡大が期待される。株価は調整一巡して反発が期待される。
■保育所運営の最大手、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー
 総合子育て支援カンパニーの持株会社である。保育所・学童クラブ・児童館などを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力に、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)も展開している。
 保育理念を「生きる力を育む」として、オートロックや緊急通報機器などを整備して職員の安全研修も充実した安全・セキュリティ管理、食物アレルギー・感染症・食中毒などに対応するための各種マニュアル整備、保育用品一括購入でコストを抑制するコスト管理、ジェイキャストによる独自の保育プログラム(英語・体操・リトミック)、ジェイキッチンによる安全な給食とクッキング保育、日本保育総合研究所による発育支援などに強みを持つ。グループ総合力を活かした総合子育て支援カンパニーである。
 16年3月期末の子育て支援施設数は首都圏中心に、保育所159園(認可園・公設民営10園、認可園・民設民営118園、東京都認証保育所26園、自治体認定保育所1園、その他認可外保育所4園)、学童クラブ55施設、児童館10施設の合計224園・施設(15年3月期比24園・施設増加)である。保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手である。
 16年9月には、相鉄ホールディングスの子会社で、横浜市において認可保育所および民間学童施設を運営する相鉄アメニティライフの全株式を取得して子会社化した。重点拠点の一つである横浜エリアの事業展開の充実を図る。
■保育士確保に向けて採用手法に工夫、待遇改善も先行して推進
 人材活用面では、配偶者の転勤への対応や時短勤務などそれぞれのライフイベントに添った勤務体系、福利厚生・研修制度の充実、男女を問わない産休・育休取得の推進などに取り組んでいる。女性の産休・育休取得率は90%以上である。
 保育士の新規採用については例年、新卒200名程度、中途100名程度を採用している。保育士資格を有する学生を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を採用するなど保育士確保に向けて採用手法を工夫している。保育士資格を持たない新卒の新規採用については、入社内定後に社内で業界初の「保育士養成講座」を開設して保育士試験にチャレンジさせる。保育士を目指す意欲のある一般学生に対して保育士資格取得のサポートを行う業界初の試みである。
 16年4月には日本保育サービスが学校法人敬心学園日本児童教育専門学校の2名に奨学金支給を開始した。保育士志望学生向け給付型奨学金制度(日本保育サービスへの就職を希望する学生対象)で、保育士を安定的に確保するため全国規模で保育士を目指す学生に奨学金支給を広げる方針としている。
 16年5月には日本保育サービスに勤務する保育士全員の賃金水準を引き上げると発表した。引き上げ幅は年収ベースにして平均4%相当の見込みで、保育士改善費用として17年3月期に3億円を予定している。16年3月期のベースアップ8%に続く2年連続の大幅賃上げとなる。また18年3月期にも賃金水準の引き上げを実施する予定で、社会的に評価される賃金制度の構築を目指すとしている。
 16年9月には保育士資格取得特例制度を活用して幼稚園教諭の保育士資格取得を支援すると発表した。幼稚園教諭資格保有者を対象として、受講費用の会社負担や受講期間中の勤務軽減など、同社グループの保育園で正社員として勤務しながら保育士資格を取得することを支援する。
 11月28日には「良い職場推進委員会」の発足を発表した。ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて、生き生きと働ける職場環境作りに努め、働き方や職場環境について従業員からの意見や情報を収集するとともに、相談の窓口となる。
■期後半に向けて収益拡大する傾向
 四半期別推移を見ると、15年3月期は売上高が第1四半期42億29百万円、第2四半期44億09百万円、第3四半期45億93百万円、第4四半期46億37百万円、営業利益が2億19百万円、3億29百万円、5億69百万円、3億14百万円、経常利益が2億55百万円、3億56百万円、5億86百万円、4億39百万円、16年3月期は売上高が48億81百万円、50億60百万円、51億08百万円、55億03百万円、営業利益が2億48百万円、3億40百万円、4億76百万円、7億70百万円、そして経常利益が2億80百万円、3億57百万円、4億99百万円、7億48百万円だった。
 新規施設の稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大し、補助金の増減や実行時期なども影響する。16年3月期は新規開設や補助金増額などで人件費増加を吸収して15年3月期比2桁増収増益だった。新規開設は保育所17園、学童クラブ12施設、児童館2施設、撤退は保育所3園、児童館1施設で、純増は保育所14園、学童クラブ12施設、児童館1施設だった。新たに名古屋市に参入した。
 売上総利益は同20.9%増加し、売上総利益率は17.8%で同0.9ポイント上昇した。販管費は同14.3%増加したが、販管費比率は8.9%で同横ばいだった。営業外収益では補助金収入が増加したが、投資有価証券売却益が一巡した。ROEは19.4%で同0.9ポイント上昇、自己資本比率は30.5%で同0.3ポイント上昇した。配当は同1円増配の年間5円(期末一括)で配当性向は34.9%だった。利益配分については、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。
■17年3月期第2四半期累計は増収減益、保育士待遇改善を先行実施
 今期(17年3月期)第2四半期累計(4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比10.4%増の109億73百万円、営業利益が同40.3%減の3億51百万円、経常利益が同31.4%減の4億37百万円、純利益が同33.3%減の2億79百万円だった。
 新規開設も寄与して2桁増収だったが、保育士の待遇改善を国に先行して実施したため減益だった。新規開設は保育所12園、学童クラブ7施設、児童館3施設、民間学童クラブ1施設で、16年9月末時点の子育て支援施設の合計(16年9月末子会社化したアメニティライフ含む)は249施設(保育園171園、学童クラブ62施設、児童館12施設、民間学童クラブ4施設)となった。
 売上総利益は同13.8%増加し、売上総利益率は14.3%で同0.5ポイント上昇した。販管費は同54.3%増加し、販管費比率は11.1%で同3.2ポイント上昇した。また営業外収益では補助金収入が増加(前期33百万円、今期43百万円)し、受取保証料32百万円を計上した。特別損失では前期計上の減損損失23百万円が一巡した。
 四半期別の業績推移を見ると、売上高は第1四半期54億24百万円、第2四半期55億49百万円、営業利益は99百万円、2億52百万円だった。
■17年3月期は保育士待遇改善を実施して減益予想
 今期(17年3月期)通期の連結業績予想(5月10日公表)は、売上高が前期(16年3月期)比8.7%増の223億40百万円、営業利益が同14.8%減の15億64百万円、経常利益が同12.4%減の16億51百万円、そして純利益が同11.9%減の10億57百万円としている。また配当予想は同1円減配の年間4円(期末一括)で予想配当性向は31.6%となる。
 新規開設も寄与して増収だが、国の政策に先駆けて賃金大幅引き上げなど保育士の待遇改善を実施するための費用として3億円、保育園での業務負担を軽減するためのシステム導入関連費用として1億円を予定しているため減益予想である。保育士の確保と職場環境の改善による離職率の低減を目指す取り組みを推進する。
 新規開設は保育園13園、学童クラブ7施設、児童館3施設の予定である。そして16年9月末時点で保育園12園、学童クラブ7施設、児童館3施設、民間学童クラブ1施設を開設済みである。山形市、郡山市、藤沢市、大津市、豊中市、福岡市、那覇市に初進出する。
■中期経営計画で保育士待遇改善、新学童クラブ、海外展開などを推進
 新中期経営計画では重点目標として、安全対策の強化および保育の質のさらなる向上、新規開設および既存施設の保育士増員による受入児童数の拡大、人材投資の拡大(採用活動強化、人材育成強化、人事評価制度見直し)、経営管理体制の再整備(事業リスク管理体制強化、グループ会社連携強化)、収益基盤拡大に向けた新規事業への着手(民間児童クラブ、既存サービスの拡販、海外展開)を掲げている。
 重点目標の実現に向けた諸施策は、安全管理体制のさらなる強化(専門部署を創設して組織横断的な体制強化を推進)、従業員給与の引き上げ(15年度保育士の給与引き上げ8%実績、16年度引き上げ4%予定)、各分野におけるシステム導入(業務負担の軽減、経営管理の効率化)、保育士確保に向けた施策のさらなる充実(求人費予算の増額)としている。
 認可園以外の新規分野への事業展開では、グループ総合力を活かし、英会話・体操・音楽などを導入して料金設定の面で自由度が高い「公的ではない新学童クラブ」などによる幼児教育、英会話プログラムなどの外販、他社既存保育園の給食請負受託などを推進する方針だ。M&Aの活用も検討するようだ。
 新たな目標数値は17年3月期売上高223億円、経常利益16億円、保育所開設13園、学童クラブ・児童館開設10施設、18年3月期売上高240億円、経常利益19億円、保育所開設11園、学童クラブ・児童館開設7施設とした。また上記とは別に、東京都認証保育所から認可保育所への移行(移転新設含む)が17年3月期2園、18年3月期2園、民間学童クラブの開設が17年3月期2施設の予定としている。
 16年9月には東京都文京区湯島に、新タイプの学童クラブ「AEL(アエル)湯島」をオープンした。新規事業の位置付けで、従来の学童クラブと異なり補助金を申請しない。学童保育利用者の要望に対応して、独自のプログラムにより「学童保育+問題解決能力などのライフスキル+習い事」が1カ所で受けられる。そして11月15日、第2号施設となる「AEL横浜ビジネスパーク」を17年4月1日にオープンすると発表した。
 また16年9月、東京都港区「子育て支援室すくすくぷらす」をオープンした。集団のなかで過ごすことが苦手な子どもとその保護者への支援を行い、子どもの発達を促す教室である。グループ企業の日本保育総合研究所発達支援チームが運営する。
 11月1日には資生堂<4911>と共同で、17年2月を目途に事業所内保育所の運営受託を事業の柱とする合弁会社(当社出資比率49%)を設立すると発表した。資生堂は現在、掛川工場の敷地内に事業所内保育所を17年秋に新設することを計画し、内閣府に「企業主導型保育事業」を申請しており、新会社の受託1号を予定している。さらに全国の様々な企業からの事業受託を目指すとしている。
 また海外はベトナムで幼稚園事業を本格展開する方針を打ち出している。現地で急増している中間層の共働き世帯をターゲットに幼稚園事業を展開する。現地で定められた教育カリキュラム以外に、工作、音楽、語学などの独自教育も取り入れる。現地でスタッフを採用し、17年3月期中に1~2カ所の開設を目指す。現在は外資規制があるため、当面は現地企業と合弁会社を設立し、認可外幼稚園として展開する。将来的には100%出資の現地法人で、公的幼稚園として日本国内と同規模の展開を目指すとしている。
■待機児童解消政策が追い風で中期的に収益拡大基調
 アベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度末までに約40万人分の受け皿を確保することで待機児童解消を目指している。そして15年4月には新「子ども・子育て新支援制度」がスタートし、アベノミクス「新3本の矢」では受け皿目標を50万人に引き上げた。また東京都は小池百合子新都知事が待機児童解消を重点政策として掲げている。
 都市部を中心に保育サービスの需要は高水準であり、社会問題化した待機児童解消政策論議が活発化し、保育士待遇改善、保育所運営補助金拡大、各種規制緩和などの政策が進展する見込みだ。国や東京都の待機児童解消政策が追い風となる事業環境に変化はなく、中期的に収益拡大が期待される。
■株主優待制度は廃止
 7月29日に株主優待制度の廃止を発表した。毎年9月末日現在の500株以上所有株主を対象として実施していたが、株主に対する公平な利益還元という観点から慎重に協議を重ねた結果、廃止することとした。既に実施した15年9月末日現在の500株以上保有株主への贈呈をもって廃止した。
■株価は調整一巡して反発期待
 株価の動きを見ると安値圏260円~280円近辺でモミ合う形だ。地合い悪化の影響で11月9日に241円まで調整する場面があったが素早く切り返している。
 12月1日の終値262円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想連結EPS12円68銭で算出)は20.76倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当4円で算出)は1.53%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS78円68銭で算出)は3.35倍である。時価総額は約234億円である。
 週足チャートで見ると戻りを押さえていた13週移動平均線突破の動きを強めている。調整一巡して反発が期待される。(情報提供:日本インタビュ新聞社=Media-IR)
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