ヨウ素剤、乳幼児対応に不安 柏崎刈羽原発5キロ圏、17日から事前配布

新潟県の原子力防災訓練で、3歳未満向けに安定ヨウ素剤(内服液)を調整する薬剤師。緊急時、UPZに配布される=昨年11月、長岡市
新潟県の原子力防災訓練で、3歳未満向けに安定ヨウ素剤(内服液)を調整する薬剤師。緊急時、UPZに配布される=昨年11月、長岡市
朝日新聞
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東京電力柏崎刈羽原発の重大事故時に服用する安定ヨウ素剤=キーワード=の事前配布が、半径5キロ圏内の即時避難区域(PAZ=柏崎市の一部と刈羽村)の住民を対象に17日から始まる。放射性ヨウ素による甲状腺の内部被曝(ひばく)を防ぐためだが、錠剤を服用できない3歳未満の乳幼児への対応をめぐって不安の声も上がる。
 「事前配布にこぎ着けたのは一歩前進だが、薬がもらえない3歳未満の子を持つお母さんに、具体的な指示が何もないのは不親切だ」
 柏崎市の原子力広報センターで2日にあった住民組織「地域の会」の月例会合。薬剤師でもある石川真理子委員が、親の気持ちを代弁して訴えた。
 新潟県医務薬事課によると、事前配布の対象は、3歳以上の住民ら約2万600人(柏崎市=約1万5900人、刈羽村=約4700人)。17日から計12会場で順次実施し、3~12歳は1錠、13歳以上は2錠を配る。副作用の恐れがあるため、会場では、医師や薬剤師らによる説明と、既往症や薬の服用状況の確認作業もあるという。
3歳未満の乳幼児は対象外。1錠の量では「飲み過ぎ」になるためで、3歳未満児とその保護者は、副作用などで服用できない人とともに、PAZに避難指示が出される前の段階で早期避難することになる。
 親たちの不安は少なくない。放射性物質が放出される前の避難完了が大前提とはいえ、もし逃げ遅れたりした場合、我が子の身をどうやって守ればいいのか、心配もある。
 この日の会合では、村に住む高桑千恵委員が、ヨウ素剤配布を特集した村の広報紙が、服用できない人の対応について、「早期避難していただきます。3歳未満児とその保護者も同様です」と簡単な説明で済ませていることを批判。
 「薬を飲めない乳幼児をどうすれば安全に、確実に避難させられるのか。いろんな事態を想定した具体的な対策を市や村は真剣に考えてほしい」と要望した。
 石川委員も「ヨウ素剤の丸剤をすりつぶしてシロップと混ぜ、指でなめさせる方法などもある。3歳未満児の服用方法を保護者に提示して安心してもらうことも必要」と訴えた。
 県医務薬事課によると、PAZの3歳未満児は現在、400人ほど。事前配布が可能な3歳未満児向けの薬剤は開発されていないという。保護者がヨウ素剤の丸剤をすりつぶして飲ませるなどの方法は「正確な量を計れず、過剰に飲ませてしまう可能性があるため考えていない」とし、あくまで早期避難を前提に理解を求めていく考えだ。
 事故時に屋内退避が義務づけられる5~30キロ圏の避難準備区域(UPZ)では、3歳未満児のために薬剤師がヨウ素剤の粉末をシロップ入りの水で薄めるなどして調整。錠剤とともに緊急時配布することになっている。
(三沢敦)
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