「入園拒否やめて」担任が経験を資料に 大阪・門真の幼稚園教諭

血糖値を測る太田日歌ちゃん(中央)を見守る宮本涼子教諭(右から2人目)や園児=大阪府門真市で、山崎一輝撮影

毎日新聞
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1型糖尿病の患者児童が幼稚園などに入園拒否されている問題で、患者児童を担任している大阪府門真市の幼稚園教諭が自分の経験を資料にまとめた。児童と一緒に血糖値を管理している様子などをつづっている。患者団体などを通じて他の幼稚園などに資料を参考にしてもらい、入園拒否がなくなることを願っているという。【柳楽未来】

資料を作ったのは門真市の私立大阪ひがし幼稚園の教諭、宮本涼子さん(43)。昨年4月から、大阪市の太田慶子さん(38)の三女で、1歳の時に1型糖尿病を発症した日歌(にちか)ちゃん(5)を担任している。
 資料はA4判6枚。日歌ちゃんが他の園児や職員と同じ部屋で自ら針を指先に刺し、血糖値を1日4回測定している様子を写真付きで紹介している。低血糖状態になった時に備え、園がラムネやジュースを預かっていることも記した。
 また、当初は針を指先に刺す日歌ちゃんを、他の園児が不安げに見つめていたが、しばらくすると、園児の態度に変化が出たことも記載した。「こっちに来て測ったら?」「一緒に血糖値の数字を見よう」と、園児が日歌ちゃんに声をかけるようになったという。
 宮本さんが資料を作ったのは、太田さんから「患者児童がスムーズに入園できるよう、娘の幼稚園での様子をまとめてほしい」と頼まれたのがきっかけだ。
 毎日新聞と患者団体が患者や家族にアンケートした結果、患者児童の4人に1人が入園を断られたり、難色を示されたりした経験があると回答している。以前からこの問題を心配していた太田さんは娘を受け入れた園側の経験が役に立たないか考えた。宮本さんも「血糖値をきちんと管理すれば命の危険はないし、園側にとっても大きな負担にはならない。経験が役に立つなら伝えたい」と応えた。
太田さんは、自らも会員の患者団体「大阪杉の子会」で、他のメンバー数人に資料を渡した。「娘の病気でつらい思いもしたが、宮本さんら幼稚園側の理解や協力で前を向いて歩けるようになった。資料を参考に、他の幼稚園などの入園拒否がなくなれば」と語る。
 大阪府の三井美知子さん(34)は1型糖尿病患者の長女蘭々(らら)ちゃん(3)が3カ所の幼稚園や保育園から入園に難色を示された。4カ所目の園に今春入ることが決まった後、宮本さんの資料を園側に見せて説明した。三井さんは「幼稚園生活を送る上で支障がないことを分かってもらえた」と話す。
 全国規模の1型糖尿病の患者団体「日本IDDMネットワーク」(佐賀市)は「1型糖尿病への理解を広めるために、患者児童を受け入れた経験を伝えることは重要だ。こうした取り組みが広がってほしい」と評価している。
 資料の問い合わせは大阪ひがし幼稚園(072・881・5656)

 ■ことば

1型糖尿病

 血糖値を下げるホルモン「インスリン」が体内で分泌されなくなる原因不明の自己免疫疾患。小児期に起こることが多い。国内では年間10万人に1〜2人が発症するとされ、約10万人の患者がいるとする見方がある。
宮本教諭が1型糖尿病の児童を担任した経験をまとめた資料=柳楽未来撮影

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