子供の深夜外出を制限 長野県検討会が性被害から守る条例モデル案

子供と遊ぶ保育士さん(ソフト)


産経ニュース
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子供たちを性被害から守るための条例モデルを検討してきた県の有識者検討会(座長・安部哲夫独協大法学部教授)は10日、長野市内で最終会合を開き、大人による子供への威迫などによる性行為やわいせつ行為を禁止し、子供の深夜外出を制限することなどを柱とした条例モデル案を決定した。この日の議論をもとに語句を一部修正したうえで、近く阿部守一知事に報告する。県は24日開会の9月定例県議会に提示するとともに、広く県民に対して条例が必要かどうかの議論を含めて問いかける。
 この条例をめぐっては、これまで青少年の健全育成運動を推進してきた関連団体などから、子供を性被害から守るには運動刷新とともに新たな法規制が必要だとの意見が示される一方、県弁護士会などは公権力が自由恋愛に介入する危険性があるなどとして条例制定に反対。意見が対立していることから、県は条例制定の賛否について県民が議論するうえでの判断材料とするため、検討会を設置して条例モデルの作成を進めてきた。
 2月に設置された検討会は、県弁護士会推薦の委員も含めて4人の法律の専門家で構成。子供たちの性被害防止や被害に遭った子供の支援に向けて、条例に盛り込むべき理念や禁止事項などについて、6回にわたる審議を重ねた。
 モデル案は、前文にあたる目的や基本的考え方の部分で、子供について「社会の宝であり、一人一人がかけがえのない存在」と規定。性被害は心身に重大な影響を与え、「子供の尊厳を踏みにじる卑劣な行為」と明確に非難した。
 具体的な規制項目では、子供を「威迫し、欺きもしくは困惑」させるなどして行う性行為やわいせつな行為を禁止し、違反者に2年以下の懲役や100万円以下の罰金を科す罰則を明記。わいせつな行為を子供にさせたり、教えたりする行為も、罰則は設けないものの禁止を盛り込んだ。
 一般的に使われる「淫行」という言葉は曖昧さを含むため、法規制の構成要件を明確にする立場から採用しなかった。
 深夜外出の制限については、保護者の委託・同意を得ずに正当な理由がないまま深夜に子供を連れ出し、意に反してとどめることを禁じ、違反者に対して30万円以下の罰金を科す罰則を設けた。規制する深夜は午後11時から翌日午前4時までとし、保護者は子供をこの時間帯に外出させず、深夜外出している子供を見かけた場合は帰宅を促すなどの県民の努力規定を設けた。
 このほか、条例モデルには性被害を受けた子供に対する支援体制の整備、性被害から身を守るための性教育の充実などの施策についても盛り込んだ。一方、恋愛への公権力介入などを防ぐため、条例適用の際は「国民の権利を不当に侵害しないよう留意する」ことを付記した。
 検討会の終了にあたって、安部座長は「子供を取り巻く状況が新しい時代に入った中で、他県のようないわゆる淫行処罰条例ではなく、罰則を絞り込み、性被害の支援など子供たちの視線を盛り込んだ全く新しい条例モデルとすることができた」と振り返った。
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