2016/06/20

<参院選 一票の現場から>激化する保育士争奪戦 なり手少なく、都内へ流出も




東京新聞
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 認可保育所などに入れない待機児童問題が、東京都に近い県北西部の都市で深刻だ。保育士のなり手が少ないことが背景にあり、国の対応が後手に回る中、事業者や自治体による「保育士争奪戦」が起きている。 (内田淳二)
 「仕事のフォロー態勢などについて詳しく説明があり、どこも人材確保への必死さを感じた」。資格を持ちながら保育士として働いていない「潜在保育士」の女性(42)=市川市=は、引く手あまたの状況に迷っていた。
 女性が参加したのは、千葉市内で十二日に開かれた保育所の合同就職説明会。出展した約三十の事業者や自治体のうち、新設を計画するある関係者は「施設同士で保育士の取り合いになっている。さまざまな年齢層がいるのが理想だが、どんな人でもいいから来てほしい」と本音を漏らす。
 保育士が足りなければ、定員分の子どもを受け入れることができない。実際に千葉市では今春、受け入れ可能数が減るなどして、三年ぶりに待機児童が出た。
 人材不足の一因は、保育士業界の賃金の低さ。国の調査では、平均月収は約二十二万円で全職種の平均より約十万円低いとされる。
 女性は自身も子育て中のため、給与面だけではなく、労働時間も重視する。「保育の仕事は家庭の延長線上でとらえられてきたせいか、職場環境がないがしろにされてきた」。女性はそんな不満を述べながら、こうも話す。「待遇がいい都内の保育園への就職も考えたい」
 千葉県内の保育士の有効求人倍率(二〇一五年十月)は二・一倍。全国で最も高い東京都は五・三倍に上る。ちば保育士・保育所支援センターの中村和久センター長は「都内の方が賃金も一、二万円は高い。東京に行きやすい沿線自治体では、保育士が都内に流れやすい」と解説する。
 県内では東京に負けない賃金の上乗せをしている自治体もある。昨春の待機児童数が六百二十五人と全国で二番目に多かった船橋市は、独自に月約三万円を給与に加算。保育士の確保に力を入れた結果、今春の待機児童数は二百三人と約三分の一に減った。
 だが、「船橋手当」に周辺自治体には困惑が広がる。ある市の幹部は「保育を学んだ人のうち半分しか保育士になっていない現状が問題なのに、少ないパイの奪い合いになっている。必要なのは国による給与の底上げ。自治体の独自財源では限界がある」と訴える。
 政府は待機児童の解消策として、保育士の賃金を月平均六千円引き上げるとしているが、「足りない」という声は現場で根強い。
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