【山陽新聞 社説】 「ダブルケア」約25万人 育児と介護の支援連携を

遊具で遊ぶこどもたちのイラスト(カラー)


47NEWS
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 子育てと親の介護を同時に担う。その大変さはどれほどだろうか。こうした「ダブルケア」に直面している人が全国で約25万人に上ることが、内閣府の初めての調査で分かった。

 女性の晩産化が進み、第1子出産時の平均年齢は30歳を超え、子どもがまだ幼いうちに親の介護が必要となる人が増えている。きょうだいが減り、介護の担い手が少ないという少子化の影響もあろう。

 親の長寿化などで、ダブルケアをする人は今後も増えるとみられる。その負担を軽くするため、育児と介護支援の連携が求められる。

 内閣府は、2012年の就業構造基本調査を基に、就学前の子どもの育児と親らの介護をともにしている人を集計した。

 男性が約8万人、女性が約17万人で、育児をしている人の2・5%、介護をしている人の4・5%にあたる。小中高校生がいる家庭や、遠距離の介護に携わる人も含めれば、当事者はもっと多いに違いない。

 8割が30~40代の働き盛りで、男性の9割、女性の5割が働いていた。育児や介護に時間をとられて、肉体的にも精神的にも負担が増すため、仕事との両立は一層困難といえる。

 実際、内閣府が当事者約千人に行った別のインターネット調査によると、ダブルケアとなる前に働いていた男性の2・6%、女性の17・5%は離職していた。仕事の量や労働時間を減らした人も全体の17・9%に上った。教育と介護の費用を同時に負担しなければならないという経済的な問題も生じるだろう。

 行政によるダブルケアの支援策はまだほとんどないが、育児と介護を担当する部局の垣根を越えた施策が求められる。それぞれの相談窓口の連携を密にして、柔軟な支援を考えてほしい。

 横浜市はダブルケア世帯の高齢者が特別養護老人ホームに入りやすくなるよう、今春から指針を改定した。入所の優先順位は同居の家族がいると低くなるが、ダブルケアの場合は一人暮らしの高齢者と同じ扱いにした。個々の状況に配慮した、きめ細かな対応といえる。他の自治体も参考にすべきだ。

 民間では、育児と介護のサポートを並行して手掛ける団体も出ている。こうした取り組みを広めたい。

 岡山県内では、NPO法人子ども劇場笠岡センター(笠岡市)の取り組みが先駆的だ。有償ボランティアらの力を借りて、乳幼児や園児、児童の預かり、送迎とともに、高齢者の外出、家事などの支援を行っている。双方を連携させることで包括的なサポートもできる。

 まずは、ダブルケアに対する社会的な認知を広めることが大切だ。当事者の悩み、支援のニーズを把握して、地域や職場で支える機運を高めていきたい。
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