<参院選>保育・介護 人材不足で負の連鎖


河北新報
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参院選(22日公示、7月10日投開票)に向け政府や野党が打ち出した保育士、介護士の待遇改善策を、当事者が複雑な思いで注視している。ともに給与引き上げによる深刻な人手不足の改善を掲げるが、現場からは抜本的な労働環境の見直しを求める声が上がっている。(報道部・丹野綾子)

<手取り14万円>
 「他職種より低い給料を上げてもらうのはありがたいが、ハードな労働環境に見合う内容なのか」。宮城県大河原町で保育園長を務める県保育協議会の平塚幹夫前会長(62)は、一連の改善策を疑問視する。
 保育士の初任給は手取り14万円弱で、昇給率は高くない。開園時間は延長保育を含めて午前7時~午後7時半。22、23人がローテーションで135人を受け持つ。保育計画策定などの事務作業を自宅に持ち帰る職員も少なくない。
 長時間保育を望む保護者ニーズに応えようとするほど、保育士の負担は増す。自分の子どもを他の保育施設に預けて働く保育士も多く、両立が難しくなり離職する人も多いという。
 待機児童解消を目指し各地で進む保育所整備が、人材不足に拍車を掛ける。県内では今春、認可保育所だけで20カ所以上開設された。施設ができると保護者の潜在的需要が掘り起こされ、さらに施設と保育士が不足する-。現場ではこうした悪循環が生じている。
 平塚さんは「働く環境全体の改善が必要。預ける側も預けられる側も、もっと子育てしやすい社会にしなければ根本的な問題は解決しない」と指摘する。

<質の低下生む>
 介護現場の状況も深刻だ。県内介護職の有効求人倍率(1月)は2.99倍。仙台市内で2カ所の高齢者施設を運営する蓬田隆子県認知症グループホーム協議会長(64)は「東日本大震災後、人材不足が一層顕著になった」とため息をつく。
 職員確保に向けて待遇アップを図ろうにも、事業者に支払われる介護報酬は2015年度に引き下げられ、実施は難しい。職員不足は介護の質の低下と過酷な労働現場を生み、定着率をさらに悪化させる負の連鎖につながりかねない。
 介護の質や職員のやりがい向上のため研修への参加を後押しするが、技能が上がれば給与面など待遇を上げる必要がある。介護福祉士といった資格を取得すると条件の良い職場に移る人もおり、ジレンマは募る。
 蓬田さんは「直面する課題は、いくらか月給を上げて解決するほど単純ではない。長期的な対策を講じてほしい」と切に訴える。

[保育、介護職の待遇改善]厚生労働省の調査では保育、介護の平均月収は全産業より10万円前後低く、人材不足が課題。政府が閣議決定した「1億総活躍プラン」で保育士給与を2%相当、介護職員の月給を1万円相当上げる方針を示した。旧民主など野党5党は3月、保育士給与を5万円引き上げる処遇改善法案を衆院に提出しており、参院選の公約にも盛り込む。

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