母乳育児に行き詰まってしまったら?


毎日新聞
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 出産直後は初めてのことだらけで、周囲の意見は違うことばかり。どうしても行き詰まってしまう時がある。そんな時は病院の母乳外来や自治体の保健所、母乳育児支援団体などが相談に乗ってくれる。【生活報道部・山崎明子】

 アメリカで誕生した「ラ・レーチェ・リーグ日本」は、全国に約50の支部を持つ。母乳育児中の母親らによる「集い」や電話相談を行い、医学的な研究や体験事例からさまざまな情報を提供している。東京都豊島区を拠点に活動する「同リーグ豊島」のリーダー、稲葉信子さんや本郷寛子さんらは「インターネットや雑誌などでピンとこなかったことが、ほかのお母さんたちと語り合うことで一気に分かる。これは違うと思う情報は忘れてしまっていい。自分に一番合う方法を見つけてほしい」と話す。会員になるには会費が必要で、「集い」への参加や相談は無料だ。
 母乳育児をスムーズに軌道に乗せるためのコツなどを聞いた。まずは、授乳は頻繁にすることだ。1日8~18回が普通だがもっと多いこともあるという。足りているかどうかの見分け方は▽おしっこなら1日で紙おむつ5~6枚がぬれること▽便は6週間ごろまでは500円玉ほどの量が3回以上、という。赤ちゃんが空腹になる前に指吸いなどのサインを見つけ、満足するまで授乳するようにする。一方、人工ミルクとの混合栄養でも「母乳育児」と捉えていい。順番はミルク、母乳の順番でも可能だ。母親の食事と「詰まり」は関係ないことも知っておこう。
 「痛くない乳房ケア」で知られる桶谷式母乳育児相談室は、ほぼ全都道府県で開設しており、故・桶谷そとみ氏が確立した理論と手法を学んだ助産師が、乳房マッサージや授乳指導を行う。費用の目安は初診料は5400円から、再診料は3780円から。医療費控除の対象となる。
 東京都新宿区の桶谷式乳房管理法研修センターに併設した「オケタニ母乳育児相談室」では、赤ちゃん連れで相談に来た女性がベッドに横になり、助産師と1対1で乳房ケアを受けながら育児相談や世間話をしていた。
 母乳不足の不安への対処方法を尋ねると、相談室長の鍋倉栄利子さんは「赤ちゃんは母乳をグビグビ飲んで3時間寝て、の繰り返しというイメージとはかけ離れているのが現実です」と話す。赤ちゃんは眠くなったら寝るし、空腹でなくても布団に置くと不安がって泣く。このような理想と現実のギャップに不安を持ち、ついミルクを足してしまうことが授乳リズムを乱す原因になるという。母乳の多い人も少ない人も、軌道に乗るのは出産後100日かかる。基本は、焦らず授乳を繰り返すことだ。
 ここでも母乳育児を軌道に乗せるためのコツなどを聞いた。授乳頻度は、泣いたら飲ませるの繰り返しで、1日8回以上、新生児では20回以上になることも▽足りているかどうかを見分けるのはおしっこで、紙おむつだと「むにゅっと」ぬれて6~7回取り換える程度が基準▽授乳時間は、片方の乳房を1回5分で3往復計30分ほど▽母親の食事と母乳の関係は個人差が大きいのでトラブルの原因と思うものは避けたほうが無難▽ストレスにならない程度に健康な食事を心がける――。
 記者が取材した支援団体のほかにもさまざまな団体があり、専門家の間でも意見が割れていることもある。個人の体験は人それぞれ。アドバイスは十分に聞き、自分に合ったものを取り入れることを勧めたい。出産直後の日々を思い出すと、私も冷静ではいられない。=次回は8月9日掲載予定

やまざき・あきこ 水戸支局などを経て2012年から生活報道部。14年に第1子を出産、16年4月に育児休暇から復職し、児童文学や子育ての話題を担当している。

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