保育士確保マネー合戦、事業者や自治体支援拡


読売新聞
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学生に月2万円奨学金、就職後に月2万円給付金
 深刻な保育士不足を受けて、保育事業者や自治体が保育士を確保するため、学生向けの奨学金や就職後の生活支援金といった金銭援助を次々と打ち出している。「ほかがやれば、負けていられない」。待機児童が全国で2万人を超えて増加する中、解消のための人材確保は、しれつな「争奪戦」になっている。
◆ここ1、2年で
 保育士養成課程がある京都府内の短大。保育所を展開する「京進」(京都市)グループの担当者が8月末、こんな依頼に訪れた。
 「当社には奨学金制度があります。ぜひ学生さんに利用してもらいたい」
 卒業後に入社することを条件に、希望に応じて在学中は月2万円を給付し、入社時には最大10万円の祝い金も出す。将来の社員として囲い込むのが狙いだ。
 進学塾を母体とする同グループは2011年に保育事業に参入し、現在、関東や関西で30園を運営。来春も10園以上の新設を目指しており、新たに約120人が必要になる。金銭援助は昨年度、他社との競合に負けないよう導入した。
 京進の保育事業部長、関隆彦たかひろさん(47)は「働く女性の増加で、都市部では当面、保育需要は増える。事業を広げるには人材確保がカギになる」と説明する。
 業界大手の「JPホールディングス」(名古屋市)も今年度、入社時の最大10万円の「支度金」などを打ち出して地方の学校を回る。広報担当者は「金銭援助はここ1、2年、保育士不足が顕著な首都圏を中心に急速に広がっている」と話す。
◆「先手打った」
 獲得競争は自治体の間でも熱を帯びている。
 大阪府箕面市は昨年10月、全国に先駆けて、市内の保育所に就職した保育士に3年を上限として月2万円の給付を始めた。市は人口を維持するため「子育てしやすさ日本一」を掲げており、「自治体間競争に備えて先手を打った」という。
 大阪市も今年8月、市内の認可保育所に就職すれば10万円を支給し、1年間勤めれば10万円を追加する取り組みを始めた。担当者は「取り合いになるが、何もしないと保育士が集まらない」と胸の内を明かす。
 ライバルは近隣市町村にとどまらない。
 大阪市内で昨冬に開かれた就職説明会では、全国で最も待機児童が多い東京都世田谷区が初めて出展料を負担し、区内の約10事業者にブースを持たせた。区の担当者は「大阪も待機児童が多いことはわかっているが、関東は競争が激しい。背に腹は代えられない」。今年も参加する予定だ。
 賃金構造基本統計調査(15年)によると、保育士の平均月額給与は21・9万円。早期離職が多いこともあり、全職種平均の33・3万円より大幅に低い。
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