川口保育所建て替え問題 市と周辺住民の溝埋まらず


産経ニュース様
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■県内2番目の待機児童数解消を 思い出の遊園…騒音対策に疑問
 耐震基準を満たしていない市立保育所の移転・建て替えを決めた川口市で、周辺住民と市との間で対立が起きている。建て替え先は児童遊園と市立小校庭の敷地内だが、住民の一部は遊園がなくなることと周囲への「騒音」を問題視し、市に中止を求める嘆願書と180人分の署名を提出。市は財政や待機児童の問題から譲る考えはなく、双方の溝は埋まっていない。(宮野佳幸)
 問題になっているのは昭和51年に建設された市立朝日東保育所。市は昨年12月の市議会で、耐震性不足を理由に、近くの朝日町児童遊園と市立朝日西小の校庭に建て替えることを議決した。周辺住民には今年1月から戸別訪問して説明し、反対の声があったことから3、5両月には住民説明会を開き、理解を求めた。
 これに対し、嘆願書を出した市民団体「建設中止を求める会」代表の田島努さん(52)は「急に建て替えると言われても承服できない。民主主義の冒涜(ぼうとく)だ」と抗議。「児童遊園は子供の遊び場で、桜が咲くと地域の人が花見もする。ここを守りたい」と話す。
 市民団体は、子供たちの「騒音」も問題視する。この問題では、千葉県市川市で4月開園予定だった私立保育園が、騒音を理由に市民の反発を招き、開園中止となった経緯がある。
 川口市は騒音対策として、園の外周の半分に高さ約2メートルの防音壁を設置し、窓には防音機能の高い合わせガラスを使う予定。しかし、市民団体の女性(53)は「2メートルの壁で効果があるのか疑問。小学校もあり、保育所の音が加わると周囲にはずっとうるさい状態になる」と懸念する。
 田島さんは保育所から徒歩約3分の二軒在家公園を建て替え場所として推す。「大きいし、道路も広くて安全。工場も近くにあり騒音問題もないと思う」
 一方、市側は、市有地以外への建て替えは財政状況から土地購入が難しいと判断。売買交渉の長期化も懸念材料に挙げる。二軒在家公園については大雨に備えて雨水をためる遊水地の役割があることに加え、幼稚園が建てられない工業地域にあり、同じ子供を預かる施設として建て替え先には不適格と判断した。
 市が建て替えを急ぐ理由には待機児童の問題もある。4月1日時点の待機児童数は98人で戸田市に次いで県内2番目に多い。建て替えで定員は74人から130人に増え、30年4月予定の開所で問題解消に大きく貢献するとみている。
 遊園を歩くと年輪を感じさせる桜やイチョウの木があり、住民が愛着を感じるのも理解できた。ただ、住民の声も割れているようだ。西小に通う小6男児(11)は「小さいころから遊んでいる遊園で、思い出の場所がなくなるのは嫌だ」と訴えた。一方、近くの2歳女児の母親(40)は「公園はほかのところを使えばいいので、保育所が新しくできるのはありがたい」と話していた。
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