何月生まれでも育休1年OK 保育園入園予約制が人気


東京新聞様
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 保育園の入園予約制導入に向け、厚生労働省は二〇一七年度予算概算要求に保育士らの人件費分の予算を盛り込んだ。予約制は、育休を一年間しっかり取りたい人にメリットがある一方で、恩恵を受けられるのは一部に限られ、待機児童の解消には役立ちそうにない。 (寺本康弘)
 待機児童問題が深刻な自治体では、四月に募集定員がいっぱいになり、年度途中での入園は難しい。このため、例えば九月生まれの子は、満六カ月の翌年四月入園を目指すことが多い。予約制が導入されると、満一歳の九月に入園できるようになり、一年間の育休(産後休業八週間を含む)が取得できるようになる=図参照。これが厚労省の説明だ。
 既に制度を導入しているのが東京都品川区や豊島区、名古屋市などで、どのように募集するかなどの規定は少しずつ異なる。品川区の保育課担当者は「育休を途中で切り上げずにすみ、その間はしっかり子どもと向き合える」と制度の意義を説明する。
 同区が導入したのは二〇〇八年度。育休を一年以上取得する保護者を対象に、職場復帰する月から子どもを預けられる。区内の認可保育園のゼロ歳児枠約七百人のうち、百人を予約制に割り当てている。
 ただ、一五年度には百人枠に約五百人の応募があり、入れなかった子は翌年四月入園を目指すことが多い。さらに、育休の取れない自営業者や、短期雇用の人はもともと対象外という矛盾も抱えている。
 担当者は、入園予約を利用できるのは一部の人だけであることを認めた上で、「育休を切り上げなくてよいのが一部の人だけなのは課題」と話す。
 名古屋市は一九九六年度の導入から二十年が経過したが、先着順に予約を受け付ける運用を続ける。
 市内の認可保育園のゼロ歳児三千二百二十五人のうち、予約枠は約五百人。予約できるのは出産予定日の八週前からと規定され、必然的に四、五月生まれの子が有利になる。四歳と一歳の男の子を育てる女性会社員(36)は「親の就労状況や、上の子がどの園に通っているかも考慮せず、生まれ月だけで早い者勝ちになる制度はおかしい」と怒る。
 同市担当者は「不公平という声があるのは聞いている。制度変更は国の動向を見極めたい」としている。
 二〇〇六年度に予約制を導入したものの、〇九年度にやめたのが東京都板橋区。待機児童が多いため、「枠を入園まで空けておくのは、入れない人が出ることにつながるため」(担当者)としている。
 保育士が忙しすぎると問題になっている園側の事情はどうか。ある園長によると、親と一年間過ごした子は、園に慣れるまで時間がかかる場合が多く、小さい子の方が園の負担は軽いという。ただ「小さな子を泣く泣く預ける親を見ているので、予約制はいい制度なのではないか」と話す。
 保育園を考える親の会(豊島区)の普光院亜紀代表は「無理して育休を切り上げずにすむので、誰もが確実に入園できるなら良い制度と思う」としながらも、「予約制では待機児童の抜本的な解決にはつながらない」と指摘。保育士の待遇改善などを地道に続けるしかないとしている。
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