全国自治体で進む制定 子どもの権利条例


中日新聞様
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二十日は「子どもの権利の日」。二十七年前のこの日、国連総会で子どもの権利条約が採択されたのにちなんで制定された。条約の理念を施策に生かそうと、全国の市町村で子どもの権利条例の制定が進んでいる。
 愛知県豊田市が二〇〇八年十月から行っている子どもの権利相談室。「友達から仲間外れにされた。どうすれば仲直りできますか」。相談室のフリーダイヤルに電話をかけてきた子どもがポツリポツリと話す。市の相談員がじっくり耳を傾け、同じ子から半年から一年相談を受け続けることもある。
 相談室は、子どもや保護者らが悩みを相談できる場として、市子ども条例制定後に始めた。昨年度は、いじめや交友関係の悩み、不登校、虐待、学校職員からの暴力など延べ約千二百件の相談があった。
 深刻ないじめなどの相談は、福祉や教育が専門の大学教授や弁護士からなる子どもの権利擁護委員と協力しながら解決を目指す。相談員らが学校などに出向いて事情を聴いたり、障害児施設への入所に関する相談を調査した擁護委員が、市と県、県教委に制度改善を要請したケースもあった。
 子どもの権利を守る活動として、相談窓口が重要なのはなぜか。相談室は「学校の先生や親にも話しづらいことでも、独立した機関なら話せる子や親は多い」としている。
 岐阜県多治見市は一九九九年度から毎年、市内の小学四年生から高校生までが参加する「子ども会議」を開いている。子どもたちに意見を出してもらい、行政の施策に生かすのが目的だ。
 テーマは、いじめ問題やエコなまちづくりなどで、話し合った内容を市に提言。市くらし人権課の担当者は「実現はなかなか難しい提案が多いが、子どもたちが考えていることをどう生かすか考えていきたい」などと話す。
 子どもの権利条例は、川崎市が二〇〇〇年に制定したのが始まりで、今年九月末までに四十三自治体でつくられた。中部地方では十八自治体が制定済みで、子どもの権利を実現させる取り組みが進んでいる。
 子どもの権利を社会が守ったり、子どもの権利意識を育てたりしていくには教育・福祉分野の幅広い取り組みが必要。条例を制定しただけでできるものではないのが現実だ。
 来春には、政策などに関する情報を共有し制定自治体を増やすため、「東海地区子どもにやさしいまち・子ども条例ネットワーク」が設立される。研究者らでつくる設立準備会は、子どもたちの意見を反映させるため、小中高校生の世話人を募集している。問い合わせは、代表世話人の松原信継・愛知教育大教授の研究室=電0566(26)2297=へ。
 (稲熊美樹)
 【子どもの権利に関する総合条例を制定した中部の自治体】岐阜県多治見市▽三重県名張市▽富山県魚津市▽岐阜市▽石川県白山市▽富山県射水市▽愛知県豊田市▽名古屋市▽愛知県岩倉市▽同県日進市▽同県幸田町▽石川県内灘町▽愛知県知立市▽長野県松本市▽愛知県知多市▽同県東郷町▽長野県▽三重県東員町(制定順、子どもの権利条約総合研究所による)
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