子供の貧困率の高い日本 学習支援や食事提供…総合的支援で自立へ


産経ニュース様
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先進国の中で子供の貧困率が高い日本。親から子への「貧困の連鎖」を断ち切り、学習支援や食事提供など総合的な支援で、子供の自立を促そうという取り組みが広がっている。(油原聡子)
歯磨き
 「家に帰ってからするよりも、今やった方が楽だよ」「じゃあ、頑張ってみようかな」
 スタッフのアドバイスで児童が宿題に取りかかった。夕食前に終わらせることができ、笑みがこぼれた。
 今月9日、「日本財団」(東京都港区)が埼玉県戸田市に、貧困状態にある子供を総合的に支援する拠点を開設した。対象は小学校低学年の児童。専門スタッフや大学生らボランティアが常駐し、平日の放課後から午後9時まで学習支援や食事提供のほか、基本的な生活習慣が身に付くように働きかける。世帯の収入により利用料を設定している。
 約150平方メートルの施設には、学習や食事ができる部屋や調理場があり、絵本や玩具もそろう。スタッフらが見守る中、児童らは宿題をしたり、のびのびと遊んだり。夕食の後には歯磨きの時間もある。
 施設は、不登校児や難病児の支援を行ってきた同財団の貧困対策プロジェクトの第1号拠点だ。学習プログラムの内容は「ベネッセホールディングス」(岡山市)が協力。学習支援を行うNPO法人「ラーニング・フォー・オール」(新宿区)が運営を担う。「家でも学校でもない第三の居場所」という位置づけで、貧困からの脱却を目指し子供の自立を促す。同財団は5年をめどに50億円を投じ、全国100拠点の設置を計画している。
同プロジェクトコーディネーターの花岡隼人さん(31)は、「貧困家庭の場合、自立するための力がゆがんで伝わってしまうことがある。さまざまな人との関わりから、自立する力を学んでもらえたら」と力を込める。
6人に1人
 厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、子供の貧困率は、平成3年は12・8%だったが、24年は16・3%に増え、「6人に1人」の計算になる。
 同財団によると、放置すれば、現在15歳の子供の1学年だけでも社会が被る経済的損失が約2兆9千億円に上るといい、対策は喫緊の課題となっている。
 貧困の連鎖を止めるため、近年注目を集めているのが、「社会的相続」という考え方だ。周囲の人など社会と関わる力や学力、自己肯定感など「自立するための力」を受け継ぐことを指す。かつては、家庭が貧困であっても、地域の人との交流から生活習慣などを学ぶ機会があった。だが、コミュニティーが衰退した今、そうした機会は激減している。
 慶応大総合政策学部の中室牧子准教授(経済学)は「海外の研究では、やり抜く力や人との関わりを持つ力を育むことは、貧困対策として重要な視点といわれる」と指摘する。
地域ぐるみで
 こうした中、NPO法人などを中心に、地域ぐるみで子供の貧困対策に取り組もうという動きが出てきている。NPO法人「福岡県高齢者・障がい者支援機構」(北九州市)などは10月、北九州市八幡東区の商店街に子供の居場所「もがるか」をオープンした。
 「核家族化が進み、母親に子育ての負担がかかり過ぎている。地域ぐるみで家族となり、子供が多様な価値観に触れる機会を作りたい」と今別府隆志事務局長(48)は話す。
 対象は小中学生で、学習支援や食事提供を実施。多世代交流や看護師による健康サポートなど、さまざまな面から子供を支える。
 中室准教授は「日本で子供の貧困が急速に進んでいる。低年齢のうちに介入した方が政策効果が高いとされる。早めの対策が必要だ」と話している。
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