認可外保育の監督、足りぬ人手 小池知事は体制整備表明


朝日新聞様
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保育の安全をチェックする仕組みが、自治体によっては十分に機能していない実態が明らかになった。年1回と定められた認可外保育施設への立ち入り調査の実施率が、50%未満の自治体が複数あった。理由として多くの自治体があげたのは人手不足。事故があとを絶たないなか、保育の安全性をどう担保するかが問われている。

認可外保育立ち入り、東京わずか13% 行政監督に格差

 「年1回は立ち入り調査をしたいが、優先順位をつけざるを得ない」。東京都の担当者は実情を明かす。同じ課で調査を担当する施設は認可保育所も含めて約3800あるが、職員は18人。宿泊保育などをするベビーホテルは「優先的に調査している」というが、それでも実施率は23%にとどまる。「新しい施設や、問題や苦情があったところに重点を絞っている」という。
 企業などが設置する事業所内保育所については、「設置した企業が、一義的に安全管理の責任を負っている」として、問題がある場合などにのみ調査をしており、2014年度は1カ所だけだった。だが、こうした施設でも事故が起きている。
 今年3月、1歳2カ月の男児が昼寝中に死亡した中央区の事業所内保育所は、11年の開所以来、一度も立ち入り調査を受けていなかった。発見時、男児は突然死のリスクを高めるとされるうつぶせ寝の状態で、少なくとも1時間以上、職員の目の届かないところで放置されていたという。
調査が事故防止につながっていないケースも。3月に生後6カ月の女児が死亡した大田区のベビーホテルは、過去の立ち入り調査で保育士がいない時間帯があると指摘されたが、その後も状況は改善されず、保育士のいない時間帯に事故が起きた。
 こうした事態を受け、東京都の小池百合子知事は、来年度からすべての施設に年1回巡回指導できる体制を作ることや、事前通告なしの立ち入り調査を検討すると都議会で表明した。
 神奈川県の実施率は41%。同じ課で認可保育所や児童福祉施設などの立ち入り調査も担っており、「認可保育所が急増し、対応が間に合わない」という。問題がある施設には、何度も赴くなどしている。
 昨年12月、生後4カ月の男児が死亡し、虐待したとして職員が傷害致死容疑で逮捕された平塚市の認可外保育施設に対しては、保育士が1人で子どもの面倒を見ていたとして児童福祉法に基づく勧告を何度も出していた。だが、事件は防げなかった。
 奈良市では、介護施設や障害者施設の立ち入り調査も含め、4人の職員で担当している。うち、2人はOBの再任用。「高齢者施設とは違う専門知識が必要で、本来なら別の職員が行くことが望ましい。態勢を充実させてほしいと要望を出しているが、補充されない」と担当者は話す。
 一方で、実施率が高い自治体もある。どんな工夫をしているのか。埼玉県は対象施設が476で実施率は95%。「地元のほうが実態がよくわかる」との理由から、00年から10年以上かけ、県が調査の権限を段階的に市町村に移した。
 実施率が94%の沖縄県は、保育士資格のある非常勤職員5人が検査を担っている。横浜市は、区役所の担当職員と公立保育園の園長OBが3人態勢で調査する。対象となる329施設の97%で実施していた。
 厚労省によると、「必ず」としているベビーホテルへの立ち入り調査の、全国の実施率は14年度が71%。09年度の84%から下がり続けているが「理由はわからない」という。その他の認可外施設の実施率は73%(東京都の認証保育所を含む)で横ばいだった。ベビーホテルの49%、その他の施設の34%が指導監督基準に適していなかったといい、口頭指導などをしている。(仲村和代)
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