不登校の子どもたちを減らすには? 価値観の強要やめて [福岡県]


西日本新聞様
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不登校やいじめ問題に取り組み、児童、生徒や保護者の相談を受け付けている市民団体「登校拒否を考える会・筑豊」。「不登校の子どもたちは、決して怠けているわけではない」と話す世話人の長崎陽子さん(69)に問題解決への方向性を聞いた。
 設立は1991年。きっかけは、当時経営していた学習塾に通う子どもたちが、学校や先生の悪口を言う姿に違和感を覚えたこと。知識の詰め込み型の教育が、不登校やいじめの原因ではないかと感じました。
 「学校に行かなければ、まともな大人にはなれない」「授業についていけないのは勉強が足りないから」-。大人は価値観を押しつけがちです。子どもたちは親や教師の何げない一言に傷つき、「自分の話を聞いてほしい」との思いを強めます。この認識の違いが登校拒否の原因の一つです。
 ある時、登校拒否の男子中学生の母親に「いつごろ学校生活に戻れるでしょうか」と尋ねられました。学校への復帰は決してゴールではありません。その母親には「無理に学校に行かせなくていい。生きていること、命を守ることが一番大事です」と伝えました。
 従来の価値観を変え、「いろんな人生があっていい」と言える社会をつくることが、登校拒否の減少につながると思います。
 私は高校時代、進学クラスの勉強に付いていけず、他校の生徒と目が合えばけんかもしました。「女番長」と呼ばれたことも。進学を強く勧める母への反発もあったのでしょう。会を訪ねる子どもたちと状況は違うかもしれませんが、私も不登校になり得る状況にありました。
 自省を込めて差別解消も訴えたいと思っています。父は炭鉱勤務で社宅に住んでいましたが、炭鉱労働者や朝鮮半島出身の人たちが暮らす地区を差別していました。差別の深刻さに気付いたのは自分の子供が小学校に入ってからでした。「知らないことは悲しいこと」と痛感し、市民運動に携わっています。
 長崎陽子(ながさき・ようこ)さん 1947年、桂川町出身。山田高(現嘉穂総合高)卒。個人病院の事務、高校事務を経て、2003年まで学習塾を経営。教育や人権、福祉に関する市民運動に参加。エフコープ生協の交流施設「よって館」で月に1回、認知症カフェを開催している。3女の母。
=2016/12/15付 西日本新聞朝刊=
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