病児保育、拡充に課題山積


ヨミドクター様
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保育園や幼稚園などに通う病気の子どもを一時的に預かる「病児保育」。施設は増加傾向だが、定員に達してキャンセル待ちになることも多く、利用しづらいという声がある。国は利用拡大を目指すが、施設側の負担も大きく、課題は多い。
  ■予約電話つながらない
 「毎回祈る気持ちで電話をかけている」。保育園に通う長男(3)を持つ京都市の会社員女性(38)は話す。
 10か月で入園した直後は、突然熱を出して登園できなくなることが度々あった。近くの病児保育施設に登録していたが、利用者が多く、予約の電話がなかなかつながらない。ようやく連絡がついても既に定員に達し、キャンセル待ちになることもあったという。
 職場には看護休暇制度もあるが、仕事の都合で休みづらい。夫婦とも休めない時は、ベビーシッターを使うが、同市の病児保育が1回2000円なのに対し、ベビーシッターは3万円近い。家計に重くのしかかる。
  ■国は拡充目指す
 病児保育は大きく三つに分けられる。一般的なのが、病気の子どもや回復期の子どもを預かる「病児・病後児対応型」。自治体が委託し、運営費を補助していることが多く、医療施設や保育園などが実施している。このほか、保育中に具合の悪くなった子どもを預かる「体調不良児対応型」、看護師らが自宅を訪問する「非施設型(訪問型)」がある。
 2014年度は全国1276か所で実施され、延べ利用者数は約57万人(体調不良児対応型は除く)。国は、子育てと仕事の両立を支援する目的で、19年度には利用者を150万人に増やすことを目標に掲げる。
 読売新聞が昨年11~12月、都市部や待機児童の多い全国146自治体に行った調査では、病児保育の利用拡大のために今後行う取り組み(複数回答)は「施設の増設による定員増」(52.1%)が最多で、「既存の施設の受け入れ定員増」(13.7%)が続いた。
 こうした動きを支援するため、国は昨年、施設の整備、改修費用を国や自治体が補助する制度を始めた。 看護師の配置基準も一部を見直し、病院内などの施設で「定期的な見回り」「すぐに駆けつけられる」などの条件を満たせば、例外的に常勤を不要とした。
  ■赤字生む当日辞退
 しかし、施設側には、病児保育に特有の悩みがある。子どもの体調変化や保護者の都合により、予約のキャンセルが多いことだ。
 大阪府枚方市の枚方病児保育室の定員は8人。インフルエンザの流行期などには予約が殺到し、定員はすぐに埋まってしまう。
 体調が回復したり、保護者が休みを取れたりして予約をキャンセルする場合は、午前7時半までに知らせる決まり。だが、連絡がなかったり、遅かったりすることもある。その場合は定員が空いたまま運営する。主任保育士の塩山和美さんは「回復はうれしいが、待機している人がいる時は、心苦しい」という。
 読売新聞の調査では、15年10月から16年9月にかけ、キャンセルが確認されたのは58自治体。人数は計5万4686人で、利用者合計の約4割にあたる。東京都の文京、中央、江東区では、キャンセルの合計が利用者を上回った。
 厚生労働省研究班が13年度、全国の病児保育施設に行った調査(複数回答)でも、運営に困る要因として、5割の施設が「当日利用のキャンセル」を挙げた。「人件費等採算(赤字)」とした施設も4割近い。キャンセルの多さも、赤字の一因とみられる。
 自治体からの補助金は利用者数で決まるが、キャンセルで空いた数は含まない。「保育士は予約に応じて配置され、空きが出た分の人件費は施設側の負担になる」(全国病児保育協議会の木野稔理事)と話す。
 こうした課題に、個々の施設だけで対処するのは難しい。大方美香・大阪総合保育大教授(保育学)は「保育園の嘱託医のもとで病児を預かる仕組みを作るなど、保育と医療の連携をより深める必要がある。その中に病児保育を位置づけていくべきだ」としている。
 (二谷小百合)

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