<手腕点検>保育と教育 手厚く支援


河北新報
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◎2017宮城の市町村長(30)利府町 鈴木勝雄町長

 利府町の鈴木勝雄町長(72)は、自他共に認める子ども好き。時間があれば学校や保育施設に向かう。子どもたちと触れ合い、保護者に気軽に声を掛ける。 「職員にはなかなかできない」と伊藤三男副町長(67)。「何げない会話から新住民の要望を聞き出す。保育の先進地からの転入者も多く、実現した施策も多い」と言う。
<人づくりを重視> これまでに第3子以降の保育料無料化、小中学校新一年生への運動着支給など手厚い施策を打ち出してきた。「まちづくりは人づくり」をモットーにする。 町出身で、1995年に専業農家から町議になり、98年に町長初当選。70年から連続4期務めた父権十郎氏(故人)を抜き、県内では大和町の浅野元町長(62)と並ぶ最多の連続5期だ。 「職員をうまく使う。女性の管理職登用も進んだ」と元町議会議長の郷右近隆夫町議(77)は評価。長い行政経験から県とのパイプも良好で、時に国にも直談判する。多選批判に鈴木氏は「その職の任に足る人物なら問題ない」と意に介さない。 町人口は近年、約3万6000と横ばい傾向。仙台市や自動車産業を抱える市町村に近い地の利を生かし、子育て支援で若い世代を引き寄せるが、農業振興区域などが多く、新たな宅地造成が進まない。 突破口の一つとされるのが、JR東日本新幹線総合車両センター北側の新中道地区で町などが進める土地区画整理事業だ。2年後の完成を目指し、32.7ヘクタールに大型ショッピングセンターや280戸の住宅の整備を計画する。鈴木氏は「雇用と新住民による新たな人の流れを作る」と意気込む。 ただ、町内の住宅開発ピークから30年が経過し、住民の高齢化と公共施設の老朽化が目立つ。県内有数のナシ生産も担い手の高齢化で先細りが懸念される。
<コスト増に懸念> 東日本大震災で被災した沿岸の浜田・須賀地区では復旧事業が進むが、国の特別名勝・松島の保護区域内で開発に制限がある。一時あった地域交流拠点「道の駅、海の駅」構想も消え、具体案は示されていない。 新たな区画整理事業は、町内の地域格差を広げる恐れもある。町幹部OBは「これまで地の利で持ってきたためか、町づくりのビジョンが見えない。どんな産業を起こすか、町民は将来像を待っている」と憂う。 今月2日の町議会全員協議会では、年間1億円かかる町民プールの維持費などがやり玉に挙がり、トップのコスト感覚が問題視された。 町税など自主財源には恵まれるが、文化複合施設の建設や利府小の建て替えなど大型事業が控える。桜井正人議長(58)は「コスト意識が足りない。町の固定資産台帳の早急な整備が必要だ」と訴える。 5期目の任期満了まであと1年。10月には町制施行50年の節目を迎える。バランスある町の成長モデルを町民に示すことが求められている。(多賀城支局・佐藤素子)

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