待機児童解消、対策急ぐ自治体 「保育の質」も課題…有権者の関心高く


産経ニュース様
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 産経新聞が今月実施した都議選に関する世論調査で「子育て」は雇用や医療などに続いて関心が高く、各政党とも「待機児童ゼロ」を公約に掲げている。自治体は定員拡充を急ぐが、ニーズにはまだ追いついていない。増設される保育施設のしわ寄せが「保育の質」に影響を与えているとの声も上がる。(植木裕香子)
■依然として高止まり
 今月9日の小池百合子知事の定例会見。小池氏は「昨年度の定員ベースで約2万人の保育サービスが整備された。効果は明らかに表れてきている」とアピール。平成27年度実績(認可保育所で約1万3600人分)を大きく上回っていることから、強い自信を見せた。
 自治体レベルでも都最多の待機児童1198人(昨年4月時点)を抱える世田谷区などが、国家戦略特区の規制緩和を活用し、公園内に保育所を開設。今後も計画が進む見通しだ。
 だが、今年4月1日時点の都内の待機児童数は前年同期比で約120人増の約8590人(6月9日時点の集計)に上った。世田谷区も4月の待機児童数は861人で、昨年より337人減少したものの、依然として高止まりしている状況だ。
 杉並区では昨年4月、待機児童が500人以上になると推定されるとして保育緊急事態を宣言。保育所の定員を新たに整備したことで今年5月に宣言を解除したものの、待機児童ゼロは実現できなかった。
■態勢不十分な施設も
 今後も、保育定員の拡充が求められるなかで、市民団体「保育園を考える親の会」の普光院亜紀代表は「待機児童対策として急激に施設が増えているしわ寄せが保育の質に影響を与えている」と指摘する。
 保護者らを対象にした同会の調査で「寝転んでふざけている自分の息子に保育士が靴を履いたまま『踏んじゃうよ』と言って顔を踏むふりをされた」などの声も寄せられたからだ。
 抜き打ちで保育施設の巡回を開始した杉並区でも、1歳児が午睡する際、10分おきに様子をチェックすべき態勢が不十分な施設などが発覚。区は「巡回を通じて助言していく」と話す。
 保護者の中でも、質の高い保育所を探す動きも出ている。都内の女性会社員(30)は自宅から徒歩圏内に認可保育所があるにも関わらず、自転車で30分かけて別の認可保育所に次男(3)を預ける。
 預け先では、保育士が学術文献を読んで「幼児教育」のあり方を勉強し、子供にメリットがあると判断した場合は新しい教育を導入。保護者側の意見を聞く場も設けている。「送り迎えは大変だが、この保育所に預ける価値はある」。女性は満足げに話す。
■親と保育士の対話有効
 都議選では「保育の質」を盛り込みながら支持を訴える候補もいるほか、保育人材の確保や育成、定着を公約に掲げる政党が大半だ。ただ、「人手不足だからと、経験の浅い若い人が増えても現場の負担は変わらない」と語る保育関係者がいるのも事実だ。
 保育問題に詳しい池本美香・日本総合研究所主任研究員は「保護者と保育士が質の改善に向けコミュニケーションを取る場を設けることが重要。都が手引きを作ることも有効なのではないか」と提案している。
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