私立幼稚園が保育施設開設へ 初の待機児童発生、伊勢で


中日新聞様
------------------------------------------------------------------------------------------------

 保育園やこども園に入ることができない待機児童の人数が、県内でも増え続けている。共働きの親が増えたことにより、保育施設の定員を超える申し込みがあるため。昨年十月に初の待機児童が発生した伊勢市では、私立幼稚園が保育の受け皿づくりに動き始めた。
 二〇一三~一六年度の四年間で、県内の待機児童数のグラフは右肩上がりを続ける。昨年十月一日時点で四百七十六人に達し、三年前から百八十四人(63%)も増えた。
 「〇~二歳の年齢の低い子どもを預かってほしいという申し込みが増えている」。県子ども・家庭局の担当者は要因を説明する。
 昨年十月時点の待機児童を年齢別に見ると、〇~二歳児で95%を占めた。出産を終えて早く仕事に復帰したい親が多いため。一方、低年齢児を預かるには、保育施設が多くの保育士を確保しなければならず、受け入れることができなくなっているという。
 県の「子ども・子育て支援事業支援計画」では、二〇一九年四月の待機児童数をゼロにする目標を掲げる。担当者は「実現するには、かなりの努力が必要」と話す。

 学校法人が運営する明倫幼稚園(同市岡本)は八月、市内で初めてとなる小規模保育施設をオープンする。賃貸マンションの約五十平方メートルの一部屋を借り、一~二歳児を十人ほど受け入れる予定だ。
 そんな中、昨年十月に二十七人が待機児童となった伊勢市では、私立幼稚園が率先して保育の受け皿づくりに取り組んでいる。
 「市内の待機児童の状況を知り、うちは幼稚園だが、見過ごすわけにはいかんと思った」。尾関均園長(68)は新事業に踏み切った思いを語る。保育士三人や調理師の確保、部屋の賃料などを含めて年間数千万円の費用がかかるが、開設を急いだ。
 定員六~十九人で認可も必要となる小規模保育施設は、待機児童対策として東京や神奈川などの都市部で開設が相次ぐ。尾関園長は「待機児童は増えているが、大きな流れは少子化だ。小規模保育施設なら撤退しやすい」と説明する。
 別の学校法人が運営する有緝幼稚園(伊勢市船江)は、来年四月に認定こども園に生まれ変わる。幼稚園と保育園の機能を併せ持った施設だ。現在二~五歳児の百八人が通っている園舎は建て替えられ、定員百四十一人に拡充する。新たにゼロ歳と一歳児も受け入れる。
 「夕方五時ごろまで預かってほしいという親からの希望が今でもかなり多い。ニーズに応えなければ」と岩崎真一園長(60)。少子化の中で幼稚園よりこども園が生き残りやすいとも考えたという。
 伊勢市こども課は、私立幼稚園の動きを歓迎する。担当者は「市の取り組みだけでは限界がある。待機児童の問題を民間と協力して解決していきたい」と話している。
 (大島康介)

------------------------------------------------------------------------------------------------