杉並区待機児童 初のゼロ…保育所数5年で2倍に

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読売オンライン様
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杉並区で今月1日、親が認可保育施設などに入れたいと希望しながら入れない「待機児童」が、統計を取り始めた2001年以降、初めてゼロになった。同区ではかつて、母親たちが行政不服審査法に基づく異議申し立てを行い、問題提起。こうした声を受け、区は保育所を整備し、「ゼロ」を達成した。ただ、希望の認可保育所に入れずに親が復職をあきらめるケースもあるなど、課題も残る。

住民への説明など課題
 「子どもを認可保育所などに預けられないのは不当」として、母親たち約60人が異議申し立てを行ったのは2013年2月。申し立てに参加した川島雅子さん(36)は待機児童ゼロが達成されたことに、「仕事と子育てを両立できる社会に一歩近づいた。私たちの思いが届き、感慨深い」と話した。

 申し立ては「不当な点はない」などとして棄却されたが、母親たちはその後、「保育園ふやし隊@杉並」を結成。希望の保育所に入れたかどうかなどを尋ねる独自アンケートや田中良区長との面会を重ね、地道に改善を求めてきた。異議申し立ての動きは足立区や大田区などにも広がり、待機児童問題が社会的に注目される契機の一つとなった。

 異議申し立てが行われた直後の13年4月に、杉並区の待機児童数は過去最多の285人に達していた。東京23区の中でも7番目の多さで、区は同年度から空き地や廃校を利用した保育所の整備に着手。区立公園の広場や区民センターの中庭にも保育所を作り、今年4月時点での保育所数は124か所(定員1万640人)と、13年の約2倍にまで増えた。

 区の担当者は「待機児童ゼロを早急に達成するため、わずかな空きスペースでも保育所を建てた」と説明。今後も保育所増設を続け、待機児童ゼロを継続しつつ、認可保育所への入所者を増やしたいという。

 一方、課題も残っている。

 区によると、今年度に認可保育所に入所を希望した4080人のうち、区が決めた母親の就労時間の長さなどの優先順位に基づき、希望が通ったのは74%。残る26%(1061人)は希望した保育所に入れず、保育料の高い認可外保育所に子どもを預けたり、復職をあきらめたりした。

 また、区は16年、区立久我山東原公園に保育所を建設。公園が使えなくなる代わりに、近くの民有地(約900平方メートル)を借りて広場に整備したが、近くに住む丸浜昭さん(67)は「新しくできた広場では、あまり子どもの姿を見かけない」と指摘。「ゼロ実現を急ぐあまり住民との議論が不十分のまま増設を強行し、子どもたちの憩いの場がなくなった」と嘆く。

 猪熊弘子・東京都市大客員教授(保育政策)は「都市部でゼロを達成したことは評価できる。今後は街づくりという大きな枠組みの中で保育所の設置を考え、丁寧な説明と話し合いで地域住民の理解を得る必要がある」と話している。

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