スマホで欠席連絡 進む保育園のICT化 「遠くの祖父母も孫の様子を見るのが楽しみに」

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ライブドアニュースさま
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 保育園に通う子供が増え、保育士の人手不足が問題となる中、多忙な保育士の業務負担軽減になると注目されているのが、保育園のICT(情報通信技術)化だ。

 保育士や保護者はスマートフォンのアプリを使って、紙の連絡帳や電話での欠席連絡に代える。保育園と保護者の間だけでなく、家族間のコミュニケーションにも活用が広がり、保護者からも評価されている。(加藤聖子)

 お迎え前に連絡帳をチェック

 「今日何をしたか、写真を見て子供と会話が弾む」

 「離れて暮らす祖父母もアプリを入れ、孫の様子を見るのを楽しみにしている」

 保育園用のシステム「キッズリー」を提供するリクルートマーケティングパートナーズ(東京都)が導入園の保護者に行ったアンケートで集まった声だ。同システムは現在、約1千園以上に導入されている。「会社帰りの電車内で、お迎え前に連絡帳をチェックできて助かる」など、好意的な声が多く寄せられた。

 こうしたICTシステムを導入している園の保護者は、入園時に自身のスマホに専用のアプリをダウンロードし、日々の連絡帳のやりとりや欠席連絡などを行う。

 同社事業開発部の森脇潤一グループマネジャーは「導入園の保護者の評価は高い。連絡帳の入力や欠席連絡が簡単にできて手間が省けていることもあるが、写真や連絡をどこでも確認でき、園とコミュニケーションを取りやすくなったことが高く評価されている。夫や祖父母など、家庭内で会話のきっかけにもなっている」と語る。

 「今は電話の数がかなり減った」

 東京都墨田区の私立認可保育所「小梅保育園」は、平成28年1月からICTシステムを導入した。主に登降園管理と写真の共有、個別連絡の機能を使用している。

 同園の台加津美主任は「以前は朝、子供を預かる多忙な時間帯に、欠席連絡の電話にも出ていた。今は電話の数がかなり減り、出欠一覧を見れば、お休みする子供と欠席理由がすぐに分かる」と導入後の変化を話す。他に重宝しているのは個別連絡の機能だという。「子供の体調があまり良くない時など、急なお迎えをお願いする前の段階から保護者と状況を共有でき、コミュニケーションを取りやすくなった」

 ICTシステムは、(1)お知らせの一斉配信や写真販売など、保護者とのコミュニケーションに関わる機能(2)指導計画書の作成、延長保育料の計算など事務作業に関わる機能-の2つを兼ね備えたものが一般的だ。

 現在、国内の導入実績数1位はスパインラボ(東京都)の「コドモン」。約1600園で使われている。同社の小池義則代表取締役は「多くの園が、毎年ほとんど変わらない指導計画書を手書きで書いていたりするが、システムを使えば、必要な記述を変えるだけで済み、子供たちに向き合う時間も増える。今まで慣例で行っていた作業の意義を見つめ直す機会にもなり、保護者の満足度の向上にもつながる」と話す。

 「導入園は今後も増える」

 ただ、導入園は増えてきているものの、“様子見”を続ける園も少なくない。保育現場に詳しい鎌倉女子大児童学部の小泉裕子教授は、現状を過渡期と分析。「導入への反対意見で多いのが、小さな子供にスマホを見せたり使わせたりする『スマホ育児』と混同したもの。保育現場にタブレット端末やスマホを持ち込むことへの拒否感がある。また、パソコンスキルがなく現場が混乱するという不安や、個人情報漏洩(ろうえい)などセキュリティーへの懸念もある」という。

 一方で、小泉教授は今後も導入園は増えると予想。「システムを導入することで、連絡帳に写真を添付したり、登降園時に連絡帳を見てからプラスアルファの会話ができたりなど、子供を中心としたコミュニケーションが豊かになる。園内でも保育士の技術の共有や向上にもつながるといった利点も見えてきた」と話している。

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