保育士資格保有者、67.1%が保育士として就労せず 金銭以外の「働きやすさ」を重視する人は6割超

困る表情のイラスト1(女性)
マネージンさま
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保育士として資格を持っているけれど、保育士として働いていない人は半数以上にのぼる。この現状を変えるには、どのような改善が必要だろうか。

「子ども・子育て支援新制度」とは

 政府は待機児童問題を解決するため、「子ども・子育て支援新制度」を平成27年4月から本格施行している。同制度では、認定こども園や幼稚園、保育所を通じて行われる「施設型給付」や小規模保育等への「地域型保育給付」を創設し、都市部における待機児童解消と、子どもの数が減少傾向にある地域における保育機能の確保を目指している。

 また、幼保連携型認定こども園について認可・指導監督を一本化し、学校及び児童福祉施設として法的に位置づけるなど、認定こども園制度の改善を進めるほか、地域子育て支援拠点や放課後児童クラブなどの「地域子ども・子育て支援事業」も充実させる。同制度によって、民間の保育士の給与も平均で3%ほど改善され、保育士の待遇改善も進めている。

 これらの子育て支援は国と地方による恒久財源の確保が前提になっており、来年予定されている消費税増税によって確保される7,000億円程度を含め、1兆円を超える財源が必要になると見込まれている。

保育士資格を持つ女性にアンケ―ト
 子育て支援の充実には、財源だけでなく保育士の確保が重要だ。そこで野村総合研究所は、全国の保育士資格を持つ女性7,210名を対象に「保育士としての就労状況や就労意向に関するアンケート調査」を実施し、その結果を10月3日に発表した。調査時期は7月31日から8月6日にかけて。また、2018年8月30日~8月31日には、回答者のうち、「保育士としての就労意欲を持つ現在非就労の潜在保育士」に該当した人1,000人に追加調査を行った。

 保育士資格を持つ女性の就労状況は「保育士として就労している人」が32.9%、「保育士以外の職種で就労している人」が29.5%、「就労していない人」が37.6%で、保育士資格を持ちながら保育士として就労していない「潜在保育士」は67.1%に達した。

 現在就労していない人(N=2,713名)の保育士としての就労意欲を調べると、「条件が合えば、今すぐにでも保育士として働いてみたい」が12.5%、「今すぐにではないが、いつか条件が合えば保育士として働いてみたい」が48.0%で、60.5%が保育士としての就労意欲を持っていた。「今もこの先も、保育士として働きたいと思わない」は20.3%、「分からない」は18.1%だった。

 保育士として就労意欲を持つ非就労の人に、保育士として働きたい理由を複数選択で聞く(N=1,642名)と、「子どもと接することが好きだから」(72.5%)や「子どもに関わる仕事がしたいから」(55.2%)が多かった。

 また、保育士として働く上で最も重要だと考えることを聞く(N=1,000名)と、「金銭的報酬が高いこと」が35.1%だった。以下「スタッフの人間関係がよいこと」(14.6%)、「1日あたり短い時間で働けること」(14.5%)、「土日祝日が完全に休みでであること」(10.9%)などが続き、合わせて64.9%が金銭的報酬の高さ以外の「働きやすさ」に関することを重視していた。

 保育士不足の解消には、金銭面だけでなく働きやすい環境の整備を進めていく必要がありそうだ。

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