子どもから初めて臓器移植を受けた女性


東京新聞様より
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子どもからの臓器提供に
道を開いた改正臓器移植法施行から
17日で1年が過ぎた。
4月、国内で初めて15歳未満で脳死と判定された少年から
膵臓(すいぞう)と腎臓の提供を受けた
岐阜県に住む女性(33)は、
受け取った命の重さをかみしめている。

「夏に汗が出るって、とてもすてきなことですね」。
うだるような暑さの夏空の下、
額の汗をガーゼでぬぐいながら、
浴衣姿の女性がほほ笑んだ。


十歳でインスリンの分泌がうまくできなくなる
1型糖尿病を患い、
一日四回のインスリン注射が欠かせなかった。
摂食障害も重なり身長一六二センチで
体重は三六キロから七〇キロを行き来した。
四年前にも膵臓移植を受けたが
拒絶反応が起き、腎不全も悪化。
手術直前はほぼ寝たきりだった。

移植手術は愛知県豊明市の藤田保健衛生大病院で行われた。
手術後は、連日襲われていた猛烈な吐き気や、
顔や足のむくみがウソのように消えた。
汗や尿が普通に出ることがうれしく、
気持ちも優しくなった。半月ほどで退院した。
今月上旬には遠出許可をもらって一人で
日光や鎌倉、江の島を旅した。
「一日おきに人工透析をしていたころは、
旅行なんて考えもできなかった」。
江の島の青い海と空を眺め、
「こんな景色があるんだ」と涙が込み上げた。

少年からもらった二つの臓器を「まるちゃん」と呼ぶ。
「まるく、仲良くずっと
一緒に生きていこうね」という思いを込めた。
移植の際、少年の家族から
「成功を祈っています」と書かれた
オレンジ色の折り鶴を託された。
羽ばたきそうな鶴の姿に、日々パワーをもらっている。


臓器移植に賛否があるのは知っている。
温かい意見ばかりではないのも承知だ。
「それでも無関心でいられるよりはいい。
率直に意見を交わしてこそ医療がいい方向に進むのでは」と思う。
受け渡された命のバトン。
「感謝の気持ちでいっぱい。私が元気でいることは、
移植を待っている方だけでなく
ドナーのご家族にとっても意味があること」と信じる。
落ち着いたら就職もしたい。
「人と触れ合う仕事につきたいんです」。笑顔が輝いた。
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