隠れ待機児童 実態把握し柔軟対応を



ききがけontheWEB
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秋田市の認可保育園に入園を希望する待機児童の数は、
厚生労働省によると昨年度の時点で東北の中核市では
最多の170人に上っていた。
この対策として同市は保育園3園を新設したほか既存の
6園を増改築し、園児の受け入れ枠を大幅に拡大した。
その結果、今年4月に待機児童がゼロになったことは評価されよう。

しかし、今後は受け入れ枠の拡充だけでなく、
保護者側の事情に応じた柔軟で
きめ細かなサービスと対策も求めたい。
現実には認可保育園への子どもの入園を諦め、
保育料の高い認可外の保育園に
通わせている保護者もいるし、
いわゆる「隠れ待機児童」の問題もあるからだ。

厚労省は2002年に待機児童の定義を変更した。
新定義では、認可外保育園に通っている子どもは、
保護者の経済的な事情から保育料の安い
認可保育園に転園を希望しても「緊急性が低い」として
待機児童とは見なされなくなった。
定員の関係できょうだいが別々の保育園に
通っているため、同じ保育園に転園を希望する場合も同様だ。

こうして生じた隠れ待機児童は、秋田市が
把握しているだけで85人。
待機児童の定義を狭くした結果、
これらの児童が切り捨てられるようなことがあってはならない。
さらに同市では、保護者の求職活動中に入園した場合、
3カ月以内に就職しなければ原則として退園となる。
失職した場合も1カ月(解雇は3カ月)以内に
再就職先が見つからないと退園である。

働きながら、子どもたちを離れた別々の保育園に
送迎する保護者の負担は大きい。
加えて長引く不景気で就職難が続き、
期間の短い派遣やパートの雇用が増えている。
そうした厳しい状況下で子どもの入園が安定しないようでは、
多くの保護者が不安を抱えたまま求職活動を続けることになる。

当然、子どもにもいい影響はないだろう。
保護者と子どもにとって最も身近な行政機関である市町村が、
保護者の声に耳を傾けて実態をしっかり把握し、
必要な措置を講じる努力が欠かせない。

待機児童は全国的な問題である。
厚労省によると、昨年10月現在で4万8356人に上り、
01年以降で最多となった。隠れ待機も含めれば、
数字はさらに膨らむ。
問題解決のためには、
各自治体の努力だけでは限界があるのも事実である。

民主党は「社会全体で子育てを支援する」ことを
掲げて2年前に政権交代を成し遂げたが、
マニフェスト(政権公約)の目玉だった子ども手当は、
ねじれ国会の中で大幅な後退を余儀なくされた。
仕事と子育てが両立する環境を求める
国民の声は年々高まっている。
野田佳彦首相の下で出直しを期す民主党政権には、
そうした環境整備に向けて地に足の着いた
政策立案と着実な実行を期待したい。
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