産婦人科医不足


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2010年度に、新規に産婦人科医として登録された
医師のうち女性が占める比率は約60%です。
私が医師になった頃とは隔世の感があります。
日本産科婦人科学会の調査では、
16年目までにお産の取り扱いを
やめる女性医師は35%です。
女性医師の中途離脱から生じた
問題対策を早急に立てなければ、
産婦人科医不足は食い止められません。

しかし、女性医師が妊娠、出産、育児をしながら、
産婦人科常勤医として勤務することには
厳しい現実があります。
院内保育所を設置する病院は増えていますが、
まだ全体の半数程度で量的にも
質的にも十分ではありません。
病児保育、時間外保育にいたってはさらに不十分です。
妊娠、育児中の当直勤務緩和などの
配慮も徐々に進んではいますが、十分ではありません。
働きたくても働きづらい就労環境なのです。

団塊世代の定年問題も問題になっています。
団塊世代の定年で、お産を扱う施設が
10年後には20%減るとの試算があります。
この減少をできるかぎり小さくするためにも、
女性医師の離職防止が必要です。

お産を扱う施設の減少も危惧されています。
近くでお産ができない妊婦さんが増え、
大きな社会問題になっています。
対策のひとつとして、19床以下で病院より小規模な
「有床診療所」の有効活用が考えられます。
お産を扱う産科有床診療所は全国で
約1400施設あります。
これを少なくしてはいけません。

国は産科医不足対策として、
お産を扱う施設の集約化を進めてきましたが、
それでも産科医不足を補えない地域が生じ、
集約化だけでは問題の
解決にならないことが分かってきました。

リスクの低い妊娠ならば、
家から近い施設を望む妊婦さんも少なくありません。
有床診療所でのお産の取扱数は全体の約半数です。
将来、病院の産科医の減少でお産の数が減少すれば、
有床診療所でリスクの低いお産を
いま以上に請け負うことが期待されます。

ただ、有床診療所の減少も著しく、
1996年の約4200施設から08年には
約2800施設に減りました。
有床診療所の存続だけではなく、
新たに開設する有床診療所を助成する
対策も求められます。
病院の受け皿としての有床診療所の役割について、
検討していくべき時期が来ていると思います。
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