先進「小児救命」 ドクターヘリ、実現カギは?


東京新聞
------------------------------------------------
「先進的な小児救命救急態勢」と全国の注目を集める
静岡県立こども病院の小児集中治療センター。
全国的に小児科医不足が問題となり、
救急態勢にまで手が回りにくいという実情にもかかわらず、
同センターはなぜ成功したのか。
九月九日の「救急の日」を前に検証した。

「うちだから助かった子はたくさんいる」と、
小児集中治療センター長は胸を張った。
救命救急では治療開始までの時間短縮が勝負。
一般的に、通報から患者が救急病院で
治療を受けるまでに三十分以上かかることも。
静岡県では、平均でドクターヘリが八分で到着。
重篤な患者は、同センターと連絡を取りながら治療が始まる。

「全県どこでもこれだけの対応ができるのは静岡県だけ。
消防の救急救命士、ドクターヘリ、
それに各地域の病院とのネットワークが、
この態勢を可能にしている」

静岡県では、同センターが中心となり
定期的に救命士の講習会を実施。
県内の小児救急に関わる医療関係者を集めての
事例検証を年二回行い、「お互いの顔が見える
小児救命救急のネットワーク強化」を図っている。

「依頼があれば全員引き受ける。
通常、小児救急の患者は重篤であればあるほど、
搬送先が見つかりにくいが、
静岡県では自動的にうちに運べばいい」

実は、欧米では小児と成人の救急は別分野として確立されている。
だが、日本では一般の救急病院が対応してきた。
世界保健機関(WHO)のデータによると
「一歳から四歳」の幼児の死亡率(十万人当たり)が、
先進国中で日本は最悪の部類で
「小児救命救急の不在がその一因」ともいわれてきた。
改善されずにきたのは、成人と比べて重篤な小児救急の数が少なく、
しかも赤字になりがちな救急医療の中でも特に採算が厳しいからだ。

以前、県立こども病院では、各科の医師が集中治療も担当し、
それが過重労働を招いていた。
「それなら救命救急の専門医のチームを作って負担を軽減しよう」と、
県に働き掛けて了承を得た。

しかしその一方で、せっかく研修した若手が
小児救命救急ではなく、
一般の小児科に行くケースも少なくないとのこと。
センター長は「ハコがあれば、いい人材は供給できる。
あとは、自治体や首長のやる気です」と言い切った。

------------------------------------------------