拡充児童手当 「地域主権」の名が廃る

ブランコに乗る子どもイラスト(カラー)
琉球新報
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2012年度から支給される拡充児童手当の財源として
11年度の子ども手当に関する
負担分5500億円の倍近い9800億円を担うよう
地方に求める方針
小宮山洋子厚生労働相が明らかにした。
民主党は、子ども手当を廃止する代わりに、
児童手当を拡充して復活させると説明してきた。
実態は「拡充」とは程遠い。
地方の声をろくに聞きもせず、
一方的に政府方針を押し付ける手法は
独善と言わざるを得ない。
全国知事会など地方6団体が「到底受け入れられない」
と反発するのは当然だ。
政権公約(マニフェスト)で強調した「地域主権」は
どこへ行ったのか。
むしろ、官僚依存が強まり、
中央集権が加速した感がある。
子ども手当は民主党の政権公約の目玉の一つだった。
09年衆院選の際には、
財源の全額国庫負担を打ち出していた。
小宮山厚労相は10月、
地方6団体の代表に対し「未熟な点もあった」とわびている。
謝りさえすれば、公約などいくらでも
変えられると考えているのか。
世界的な景気悪化や東日本大震災などの
不測の事態が起きたとはいえ、
財源確保の見通しが甘過ぎる。

厚労相は扶養控除の廃止に伴う
地方税の増収分(12年度で5050億円)から
手当財源に充てるよう要求した

地方6団体が指摘するように、
住民税は地方固有の財源である。
増収分を含め、使途は地方自治体が
決めるべきであって、
国が使い道を指図するのは筋違いだ。
「地方に裁量の余地がない
現金給付は国庫で賄うべきだ」とする
知事会側の主張はもっともだ。
国と地方がどう役割を分担すればよいのか、
明確なビジョンを示さないまま、
上意下達で物事を進めようとしても、
国民の理解は得られない。
厚労相は、自公政権時代の旧児童手当で
1対2だった国と地方の負担割合を
1対1に改める案を明らかにした。
それでも、総額が拡大するため、
旧手当に比べ地方の負担額は大幅に増える。
そんな重大な変更を国の独断で決めていいはずがない。
地方に負担を要求する前に、
全国知事会などと十分に話し合い、
総合的な子育て支援の在り方について
共通認識を持つことが先決だろう。
政府は早急に地方団体との
協議の場を設け、地方の声に真剣に耳を傾けてほしい。
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