幼保一体 総合こども園 15年めど子育て支援案


朝日新聞
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政府は31日、消費増税に合わせて導入する
新たな子育て支援制度案を、有識者らの検討会合でとりまとめた。
増税分を財源にした働く世代向けの支援策の目玉となる。
幼保を一体化した新型施設「総合こども園」を柱に
待機児童の解消を図り、市町村には保育サービスに関する
需要量の調査と計画策定も義務づける。
今国会に関連法案を提出して2015年をめどに
本格実施する方針だ。

新制度は消費増税分の一部を財源に充てる想定のため、
導入も増税実現が前提となる
自民党は「新制度では待機児童解消はできない」と
反対する姿勢を強め、
公明党も「財源の確保や待機児童の解消、
質の確保をどう達成するのかが不明」と距離を置く。
消費増税をめぐる与野党の攻防も絡み、
関連法案の成立の道筋は不透明だ。

新制度がめざすのは、就学前の子ども向け政策の一本化だ。
今は、主に専業主婦家庭の子どもは幼稚園、
共働き家庭では保育所に通い、
所管も文部科学省と厚生労働省に分かれる。

これらの施設を、消費増税に合わせて
15年をめどに創設する「こども園」制度の下に束ね、
指定を受けた施設には、
市町村が運営費などとして「こども園給付」を出す仕組み。
幼保一体化型の「総合こども園」が中核だが、
一定の基準を満たせば幼稚園や
0~2歳児だけを受け入れる保育所も指定を受けられ、
3種類が混在する形となる。

総合こども園は、専業主婦・共働きを問わず、
子どもを受け入れ、集団生活のルールなど
学びに力点を置く「教育」と、
安全を守りながら発達を支援する「保育」の両方の役割を担う。
対象は基本的に0~5歳児だが、
3歳未満児を受け入れるかは施設側が決める

政府は約2万3千ある保育所のほぼすべてを、
15年からの3年間で総合こども園に移行させる方針。
全国で定員の3割が空く幼稚園にも移行を促し、
待機児童の解消に役立てる考えだ。

幼稚園や保育所が総合こども園になれば、
3歳以上の子どもは必ず学級担任制になる
といった変化が見込まれる。
ただ、今でも双方の教育・保育の内容は
似通う面があり、多くの施設では変化は
緩やかなものにとどまりそうだ

また、新制度は、運営費を出す自治体の財政事情で
施設の整備にばらつきがある状況の解消もめざす。
市町村に対し、5年に1度、
保育の需要量見込みを調査した上で、
これを満たす方策などの計画を作ることを義務づけ、
需要を超えるまでは、基準を満たす施設の設置申請を
すべて認める仕組みにする。
株式会社の参入も大幅に増やす。

保育の受け皿を増やすために、
これまで「認可外」とされていた施設でも、
職員配置などの基準を満たした場合は
「こども園」に指定。運営費などを支給する。

利用方法も変わる。
まず市町村で「保育が必要か」の認定を受けるが、
今の保育所に入る基準と比べ、
パートで働く人の子どもでも入りやすくする方針だ。

保育の必要性が認められれば
親は施設を選んで直接契約をするため、
新制度は「親が入所先を自由に選べるようになる」とうたう。
ただ、待機児童がいる地域では
これまで通り市町村が入所先を決める
利用料は今の幼稚園や保育所を基準とし、
大きくは変わらないようにする方向だ。

政府は新制度に必要な額を、
15年度時点で1兆円超と見込む。
このうち約4千億円は保育を受ける子どもが増える分の
手当てに、残りは人員配置基準の改善など、
サービス向上に充てる想定だ。

待機児童は、都市部を中心に
全国で約2万6千人(昨年4月時点、厚労省調べ)おり、
比較的空きがある幼稚園の活用がカギとされてきた。
内閣府幹部は「新制度で待機児童の解消は
スピードアップする」と期待するが、課題も多い。

総合こども園に受け入れ義務がない3歳未満児は、
待機児童の8割以上を占める。
今回の論議にかかわった保育団体は
「これでは待機児童解消にならない」と批判する。

また、保育所が原則的にすべて総合こども園に移る一方で、
肝心の幼稚園は、関係団体の慎重意見に配慮した結果、
施設側の判断にゆだねる「手あげ方式」に。
私学助成を受ける従来型の幼稚園として存続する道も残った。
政府は総合こども園に対する給付を手厚くすることなどで、
移行を促すとしているが、具体策の検討は進んでいない。

こども園制度の所管も複雑で、
分野ごとに厚労省、文科省、内閣府の権限が入り組む
「縦割り行政」の非効率解消というねらいは中途半端に終わり、
関係者からは「一元化でなく三元化になる」との懸念も出ている。(長富由希子)

■新たな子育て支援制度のポイント

・保育所と幼稚園を一つにした「総合こども園」創設

・大半の保育所を3年かけて移行、幼稚園は手あげ方式

・株式会社の参入を拡大

・1兆円超の財源を確保し、2015年めどに本格実施

・市町村に保育の需要量把握、計画策定を義務づけ
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