ほっとするニュース:「お兄ちゃんがんばって!」応援してくれる人に勝利を届けたい


毎日jp
------------------------------------------------
◇「勝利を届けたい」

センバツ出場が決定した翌日の1月28日。
宮城県石巻市の鹿妻(かづま)・渡波(わたのは)両保育所の
園児28人が作った横断幕が、
同市を訪れた浦和学院の職員に手渡された。
津波の被害を受けた渡波保育所の園児たちは
鹿妻保育所で過ごしている。

赤、青、ピンク、色とりどりの水玉と、
ニコニコ笑う子供たちの似顔絵が描かれた横断幕には
「浦和学院のお兄ちゃんがんばって!!」と書かれている。
鹿妻保育所の所長は
「これまでの支援に感謝しています。甲子園出場おめでとう。
全力で頑張ってください」とのメッセージを寄せた。
  ◇  ◇

東日本大震災の発生直後から、
浦和学院は宮城県石巻市を中心に独自の支援を続けてきた。
ペットボトルに掃除などに使う生活用水を詰めて送ったり、
同校で保有する散水車を貸与したり。
被災地の少年サッカーや少年野球のチームを同校に呼んで交流も行った。
校長は「学業や部活動だけではなく、
生徒たちには大震災を前にして自分で感じたり考えたことを
行動に移してほしかった」と明かす。

学校ぐるみの支援を続ける中で、
野球部は昨年12月21~24日と今年1月6~10日の
2回に分けて夜行バスで石巻市に入り、
ごみ拾いや保育園児らとの交流を行った。

12月22日には鹿妻保育所で園児に
クリスマスカードとお菓子をプレゼントし、
ブランコや縄跳びで遊んだ。
翌23日には、津波の被害を受けた住宅跡でごみ拾いをした。
泥で汚れた洋服や茶わんのかけら、
写真を一つ一つ拾って麻袋に入れていく。
午後3時までの5時間で直径1メートル以上の袋
15個がいっぱいになった。
ごみを拾った外野手(2年)は
「津波がこんなに恐ろしいとは思わなかった。
苦しい気持ちでいっぱいになる」と顔をゆがめた。

選手とともに被災地に入った監督は
「一人一人が自らを見詰め直す時間になった」と振り返る。
石巻市から戻った後、選手全員がリポートを書いた。
その中で、選手(2年)は
「これからも東北の方々が元の生活に戻れるように
何らかの形で貢献したい。
その一つとして今は高校野球をやっているので
甲子園でテレビを通してみんなを
勇気づけられるようなプレーをする」と誓った。
   ◇  ◇

1月30日、横断幕が浦学の校舎正面入り口に掲げられた。
外野手(2年)は言う。
「つらい思いをしているはずなのに
応援してくれる人たちにプレーだけでなく勝利を届けたい。
『一緒に遊んだお兄ちゃんだ』と思い出し、
少しでも頑張る気持ちが湧いてくるように。
自分たちにできることはそれぐらいしかない」

大会開幕は3月21日。被災地からの応援に背中を押され、
浦学の「日本一」を目指す戦いが始まる。
(この企画は林奈緒美が担当しました)
------------------------------------------------