年間14人死亡…なぜ止まぬ保育事故


msn産経ニュース
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さいたま市南区の保育室で昨年2月、
保育中の女児=当時(1)=が死亡した事故から約1年が過ぎた。
女児の両親らが今月10日、
市へ再発防止を求める要望書を提出したが、
全国で昨年1年間に14人の子供が保育中に死亡するなど、
保育事故は後を絶たない
専門家は「背景には保育士の劣悪な
労働環境などがある」と指摘する。(塩塚夢)

「保育園は友達がたくさんできて、楽しいはずの場所。
なのに、なぜ…」-。死亡した美月ちゃんの母(33)は
こういって涙を流した。

美月ちゃんが死亡したのは昨年2月10日。
さいたま市南区曲本の認可外保育施設「けやき保育室」で午睡中、
ぐったりしているところを女性保育士が発見した。
市の報告書によると、発見時、美月ちゃんは
うつぶせ寝の状態だったという。

しかし本来、厚生労働省が示している
認可外保育施設指導監督基準では、
あおむけに寝かせることが義務づけられている。
また、基準では睡眠中の子供の顔色や
呼吸の状態をきめ細かく観察するように指導しているが、
美月ちゃんの場合、死亡推定時刻から
2時間以上放置されていた可能性がある。

実は、子供の死亡事故は午睡中に集中している。
厚労省の調査によると、昨年1年間に報告された
保育施設での死亡事故は14件。
そのすべてが午睡中で、
うち11件が基準に反するうつぶせ寝の
状態だったことが確認されている。

さいたま市では、市内の認可外保育園約180施設に
毎年1回、基準を守っているかを確認する
定期調査を行っている。
基準を守っていない施設に対しては
その後抜き打ちで調査をしているが、
そのすべてには抜き打ち調査が行えていないのが現状だ。
全国的にも全施設に抜き打ち調査を行っている
自治体はなく、基準に反してうつぶせ寝が
常態化している施設もあるとみられる

「赤ちゃんの急死を考える会」の会員で
子供の医療事故に詳しい
寺町東子弁護士(東京弁護士会)は
「調査の日だけ、基準を守っている様子を見せればいい。
予告調査では本当の姿は見えてこない」と指摘する。
さらに寺町弁護士は、なおもうつぶせ寝が
根強く現場に残る理由を、こう説明する。
「一般的に、うつぶせ寝は子供が寝やすいとされている。
保育士さんの労働環境は悪く、仕事量が多い。
なるべく時間を作れるように、
子供を早く寝かせようとしてついうつぶせ寝にしてしまう」。

子供が寝つくと、その間に他の作業をしていて
見回りがおろそかになりがちだという。
「保育士さんの年収は200万ぐらい。
なり手が少ないと、ますます一人当たりの
負担が増えるという悪循環になってしまう」と寺町弁護士。

施設への抜き打ち調査の実施などを求める 美月ちゃんの母らの
要望書への回答は、3月中に示される。
「いつも最後は『私が預けたからいけなかったのか』と
自分を責めてしまう。こんな思いをする子供と親を、
もう出したくない」-。それが、 美月ちゃんの母の願いだ。
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