タクシーが「子育て支援サービス」 顧客開拓へ対応きめ細かく


msn産経ニュース
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タクシー各社が、塾への子供の送迎や妊婦、
新生児を持つ親の利用などを想定した
「子育て支援」サービスに力を入れている。
保育士などの資格所有者や専門の教育を受けた担当者が乗務し、
利用者にきめ細かく対応。
不況下で業者間の競争が厳しさを増す中、
新たな顧客開拓の狙いもあるようだ。(竹岡伸晃)

◆“保育士”が乗務

東京都内に住む会社役員、田中敬子さん(46)は
幼稚園に通う長男(5)のお迎えに月2回程度、
タクシーを利用している。
サッカーの練習などを終えて幼稚園から出てくるのは
午後5時過ぎ。仕事の都合で自分が迎えに行けない場合、
代わりにタクシーを手配するという。

田中さんが使っているのは、
タクシー大手の日本交通(東京都北区)が
昨年8月に始めたサービス「キッズタクシー」だ。
学校や塾への子供の送迎▽妊婦の通院▽
乳幼児を連れた親の外出-などの際に利用してもらうもので、
保育士の資格所有者など8人が専任で乗務。
普通救命講習などを受講し、
緊急時にも対応できるよう備えている。

同サービスのチームリーダー、徳山正敏さんは
「安全重視で、ゆっくり丁寧に運転するよう心掛けている。
子供だけで利用するケースも多く、
ルートや緊急時の連絡先などを細かく親と
打ち合わせるようにしている」。
田中さんも「乗務員の方は全員子供の扱いに慣れており、
安心して任せることができます」と満足そうに話す。

予約が必要で料金は1時間4550円から。
2月の予約数が100件を大きく上回るなど
利用は右肩上がりで伸びており、同社は4月以降、
担当乗務員を増やし、事業拡大に力を入れる方針だ。

◆仕事に誇り

「全国子育てタクシー協会」(京都市南区)が普及を進める
「子育てタクシー」は、中小事業者でも導入しやすいのが特徴だ。
通学、通塾する子供の送迎▽子供連れの外出▽
夜間の急な発熱時などの通院▽出産時の産院への通院-
に対応した4コース。
同協会の養成講座を受講した事業者は
「子育てタクシー」の名称でこれらのサービスを提供できる。

講座の内容は、チャイルドシートなどの
機器の取り扱いや子供、妊婦を乗せた際の運転マナー講習、
保育現場での実習など多岐にわたり、
「運転と子育て支援のプロ」育成を目指すという。
同協会の内田輝美会長は
「利用者の減少や価格競争などタクシーを取り巻く環境は
厳しいが、質の高いサービスを提供すれば
新たな顧客を掘り起こすことができる」と力を込める。

「子育てタクシー」は現在、25都道府県で約130社が展開。
利用時には各事業者への事前登録などが必要だが、
通常のタクシーと同じ料金で利用できる。

チャイルドシートやジュニアシートを購入し、
先月20日にサービスを始めた湘南交通(横浜市港南区)。
営業エリアに住宅街を抱え、子育て世代が多く住む。
太田宏社長は「乗務員が『人々の役に立っている』と
仕事に誇りを持ち、業務全体の質向上にもつながっている」
と手応えを話している。



営業不振と労働環境悪化

国土交通省のまとめでは、
法人タクシーの平成22年度の輸送人員は
15億5720万人、営業収入は1兆5755億円で、
過去5年間でそれぞれ19.7%、17.1%減少した。
長期化する不況の中、「個人や企業が
利用を控えている」(業界関係者)ことが背景にある。

労働環境悪化も顕著で、国は21年10月、
供給過剰が進む特定地域を指定して
新規参入や増車を規制する「特別措置法」を施行。
各地で減車も行われている。
一方で、子育て世代や高齢者・障害者に対応した
輸送など新たなサービスに取り組む動きも広がっている。
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