笑顔の輪 またひとつ


朝日新聞
------------------------------------------------
かつて患者が子孫を残さないように堕胎を強要された歴史がある
国立ハンセン病療養所、菊池恵楓園(けい・ふう・えん)に
1日、子どもたちの笑い声や泣き声が響き渡った。
ここに開園した保育所「かえでの森こども園」。
思いがかなった入所者はさっそく園児と触れ合い、笑顔を見せた。

地域開放の願いを込められて誕生した保育所は、
白色の建物が多い療養所内にあって赤と白の外壁がとりわけ目を引く。
この日は9人が来園し、
床暖房の利いた暖かな畳の上で4人の保育士と一緒に
粘土やおもちゃで遊び、療養所敷地内の散歩も楽しんだ。


途中から3人の入所者も輪に加わった。
入所者自治会の男性(79)は
「ここでは女性が子どもを産めず、
強制的に堕(お)ろさせられる苦しみも味わった。
子どもの元気な声はなぐさめになる」。
園児からこねた粘土を渡された女性(70)は
「長いこと子どもがいなかったから
、どうやって接していいのか分からなくて戸惑ってしまったけど、
とにかく(保育所を)長く続けて欲しい」と期待した。


開園日に合わせ、長男(3)と次男(2)の入園申し込みに来た
合志市の女性(33)にとって療養所は、
保育所ができるまで「未知の場所」だった。
「中に入ってみると、静かで自然も多くて良いところ。
入所者の皆さんと触れ合うことができるいい機会になります」と話した。

この2人も含め1日までに入園したのは、
6歳児までの36人の定員に対し、0~3歳の11人。(山本恭介)


「広い敷地に多くの自然 子どもに最適の場所」園長


保育所を運営する熊本市のNPO「ひと・学び支援センター熊本」の
常務理事でもある園長(58)に、開園にあたっての思いを聞いた。

――いよいよですが、苦労もあったようですね

認可外の保育所なので、公的支援はほとんどありませんでした。
一方で国立施設内のため認可並みの設備を準備する必要があり、
公募から1年近くかかった。開園することができてホッとしています。

――なぜ公募に応じたのですか

合志市は待機児童が多く、保育所が求められていた。
私たちのNPOは廃校を利用し、
地域のニーズに応えるという事業をしており、
恵楓園の施設をいかせるのでは、と考えたのが始まりです。

――保育所は、使われていなかった建物を利用したとは
思えないほどの明るさです

もともとは看護学校で窓も小さく薄暗かったが、
窓を大きくし、開放感あふれるようにした。
外には桜の木が立ち、春が待ち遠しいです。

――今も入園を呼びかけていますね

11人というのは予想より多かったが、
とにかく足を踏み入れて見てもらいたい。
広い敷地にたくさんの自然が残る、子どもには最適の場所です。

――今後の入所者との交流は

自然に、散歩の合間に触れ合ったりできる環境を作りたい。
花見なんかも一緒にできたらいいですね。
------------------------------------------------