目黒区 財源捻出に苦戦


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「命名権」「自販機」 効果は数千万?

深刻な財政危機で3年間に約180億円の
収支改善が必要な目黒区が、
新たな財源捻出に躍起になっている。
区施設の「命名権売却」や自動販売機の「設置料公募」まで、
考えられる様々な手立てを“総動員”したい考えだが、
それだけやっても、今のところ見込める効果は数千万円程度。
今後、保育料や学童保育の値上げなど、
財政危機の痛みが広がることから、
「区民の理解を得るためにも可能な限り努力しないと」と
区も懸命なのだが……。(森重孝)


■人気に陰り

区が期待を寄せているのが、区施設の命名権売却だ。
例えば「めぐろパーシモンホール」は
定員1200人の大ホール、同200人の小ホールを備える
本格的な施設。区の担当者は
「ある程度の値が付くのでは」と期待を寄せるが、
最近は命名権売却自体、人気に陰りもあって
見通しは決して明るくはない。

目黒区のお隣、渋谷区では2008年度、
区立複合施設「文化総合センター大和田」の命名権を公募したが、
本体施設は2年以上にわたって応募ゼロだった。
コンサートホールとして有名な
「渋谷C(シー).C(シー).Le(レ)mo(モ)n(ン)ホール」は、
年間8400万円の契約が満了し、
旧来の「渋谷公会堂」に戻ったが、
命名権の再公募は不調のままだ。

区役所内には「命名権を募っても、
そもそも契約が成立するのか」と危ぶむ声もある。

■大阪府は3億円

逆に、地味でも確実に利益に結びつきそうなアイデアもある。
区は庁舎やスポーツ施設などに設置する自動販売機の設置料を、
従来の1台当たり1000円程度から、
今後は公募に切り替え、最も高い価格を提示した
業者と契約する仕組みに改める。

この制度を巡っては、大阪府が08年度に
329台から約3億円の収入増を生み出すことに成功している。
目黒区が区施設に設置している自販機台数は
この約3分の1の計111台。
億単位の収入も期待できそうだが、
こちらもそれほど甘くはなさそう。

大阪では1台あたり300万円という
高い設置料を徴収できたのは、
人が24時間出入りする警察署など。
区にはそうした施設はない。
福祉団体など無償で自販機設置を認めている施設もあり、
区担当者は「どんなに高くても
1台当たり20万~30万円程度では」と厳しい表情。
今月から、まず26台分の公募を始めたが、
今のところ総額でも1000万円の収入に
届くかどうかという計算という。


■予算は32億減額

厳しい財政事情の下、
目黒区がまとめた2012年度の一般会計予算案は
総額885億円。
事業規模の見直しなどで、
当初想定より32億6000万円を減額した。
公園整備とコンピューターの保守費用を大きく削る一方で、
防災対策や民間建築物の耐震化促進、
木造密集地域の対策事業などに予算を振り分けた。

区が昨年8月、財政再建を巡って
意見を募集したところ、
「役所の空きスペースを民間に貸し出す」などの
アイデアが寄せられた。しかし、建設的な意見は少なく、
多くは保育料の値上げや福祉予算削減などへの
反対意見だったという。

【目黒区の財政危機】

2008年度に株取引で利益を上げた区民が
40億円超の高額納税をし、税収が一時的に増加。
これに伴って09年度から3年間、
都からの交付金が大きく減額された。
ところが「リーマン・ショック」による税収減が重なり、
08~09年度の歳入減は100億円超に。
区は12~14年度で計約180億円の
収支改善が必要として、区有施設の統廃合、
行政サービスの全般的な見直しを進めている。
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