保育所 放射能に苦悩


朝日新聞
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東京電力福島第一原発事故による
放射能問題に対応するため、
茨城県内の民間保育所の78%が園での遊びについて対策を実施し、
69%が給食の内容を変更していることが、
筑波大医学医療系の徳田克己教授の研究室の調査で明らかになった。
41%の園で退園や休園をした園児がいたほか、
保育の変化のため、いらいらや睡眠障害などが
子どもに広がっていることもわかった。

調査は1月下旬、県内全域の
216の民間認可保育所を対象に行われた。

遊びについて放射能対策を実施していたのは168園。
外遊びの後にうがいを徹底(93%)
▽外遊びで帽子をかぶらせる(76%)
▽外遊びを控える(48%)
▽土に触らせない(29%)
▽散歩に行かない(26%)などだった。

放射能の影響で給食など食事の対応を変更したのは149園。
福島県産食材を使わない(55%)
▽園でとれた野菜や鶏卵を食べない(31%)
▽県産食材を使わない(15%)などだった。

影響は行事にも及んだ。
運動会では70園が、時間の短縮(37%)
▽室内で実施(17%)
▽中止(9%)といった変更を加えた。
遠足は120園が変更。
内容は、時期の変更(55%)
▽行き先を線量の低い場所に変更(24%)
▽中止(同21%)などだった。

退園や休園をした子どもがいたのは89園。
退園の理由に引っ越しを挙げたのが延べ62園、
家庭で過ごすケースが14園だった。
転居先は西日本や首都圏が多く、
ブラジル、中国、米国など海外も10人いた。

園の放射能対策により、心身の不調などの変化が
子どもに起きているという訴えも相次いだ。
外遊びしたがる(82園)
▽いらいらしている(34園)
▽昼寝の際に寝られない(22園)
▽室内の遊びに集中できない(13園)
▽外遊びをためらう(12園)などだ。

放射性物質のリスクをめぐっては、
保護者からの要望も強く、5割を超す111園が受けていた。
内容は、持参した食材の飲食
▽線量測定と数値公開
▽外で遊ばせない
▽土の入れ替え、など。
保護者のグループ三つが個別に線量を測定している園や、
研究者の親が園の使う線量計を持ち帰り、
性能を確認した例もあった。

研究室は、保育の現場は放射能により深刻な影響を受け、
保護者からの厳しい要望に対し、
懸命に応じようとしていると分析。
徳田教授は「目に見えない放射能を
子どもたちは理解できないまま環境の変化にさらされている。
まずは大人が正しい情報を得て問題を理解し、
動じない姿を見せることが大切です」と話す。(吉村成夫)
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