全国最多の名古屋市「待機児童」減へ躍起


日本経済新聞
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保育所への入所を希望しながらかなわない「待機児童」の数が
全国最多となった名古屋市が、
“ワースト1位”からの脱却に本腰を入れている。
2012年度は認可保育所を過去最多の31カ所増やし、
0~5歳の入所定員を一気に約1700人分積み増す。
閉園した幼稚園を保育所に改装したり、
小学校の空き地を活用してプレハブの園舎を建てたりと知恵を絞る。

名古屋市の保育環境はこの数年で深刻化した。
昨年4月1日時点の待機児童数は1275人と、
前年(598人)の2.1倍に急増。
前年にワースト1、2位だった横浜市、川崎市ばかりか
札幌市も抜いて全国最悪となった。
例年春から秋にかけて増える傾向があり、
昨年10月1日時点では1909人と空前の規模に拡大している。

市内の幼稚園職員の原彩見さん(34)
は2歳の長男を市立保育所に預けて働くが
「もっと勤務地に近い施設に移りたいのが本音」と打ち明ける。
保育所までは車で10~15分、歩けば1時間近くかかる。
勤務先の配慮で早めに仕事を切り上げているという。

出産などのために仕事を辞め、
復職を考えている母親はより深刻だ。
30代の女性は「保育所に入りたくても、
仕事がなければほぼ入れない。
仕事を探しに行ったら『子供はどうするのか?』と言われた」と話す。
結局預け先が見つからずに復職を断念する女性は多い。

市は13年春までに「待機児童ゼロ」の目標を掲げ、
営利目的の株式会社にも保育所運営の門戸を開いた。
小学校や事業用地にプレハブの園舎を
建設するのも始まったばかりの新たな試み。
春岡小学校(千種区)で40人、
比良小学校(西区)で60人の定員を予定している。

詩織保育園(西区)は4月から、
閉園した幼稚園を改装した保育所の
第1号として再オープンした。
3歳以上が対象の幼稚園と違い、
就学前の0~6歳を広く預かる保育所に
衣替えするにあたってトイレを大きく造り替え、
調理室も新設した。
定員60人に当初は44人でスタートしたが、
余裕のあるのは3歳以上のみ。
入所希望の多かった1歳は定員いっぱいで、
0歳と2歳クラスに若干の空きがある程度という。

押村厚子園長は「本当はもう4~5人保育士を増やしたいが、
募集しても経験のある人が集まらない」。
ハードとソフトの両輪を意識した対策も欠かせない。
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