<はたらく 現場から>夜間働く親の「命綱」 24時間保育所ルポ


東京新聞
------------------------------------------------
働き方が多様になる中、夜に働く親たちの
ニーズを受け止めているのが認可外保育所だ。
名古屋市の二十四時間保育所「ぴーかぶー」で
未明まで働く保育士に密着した。 (田辺利奈)

午後5時50分 中心市街地に程近いビルの三階。
一般的な保育所と同じ生活を送る「昼の部」の
子どもを親が迎えに来る中、
入れ替わりで「夜の部」の子どもたちが登園して来た。
勝又裕美園長(31)が子どもたちに順次、夕飯を食べさせる。
メニューは空揚げとポテトサラダ。
「ご飯から食べる? お肉にする?」。
一人で同時に三人に目を配る。

6時05分 髪をきれいに結い上げた着物姿の女性が、
六歳の女児を預けると、
笑顔で別れて勤め先の飲食店へ向かった。
園内は乳児から小学四年生までの二十人ほど。
保育士三人で面倒を見る。

6時30分 ブロック玩具に子どもたちがワッと集まった。
少し離れて見守る勝又さんは連絡帳を広げた。
保護者に伝えるために、その日の子どもの様子を細かく書く。
七カ月の女の子の連絡帳には
「音の鳴るおもちゃがお気に入りでした」と記入した。

7時10分 保育士一人が帰宅し、二人態勢に。
この時点で子どもは十人ほど。
人数を確認し、おやつを準備する。

7時30分 全員でブロックを片付けておやつの時間。
食べるのがゆっくりなダウン症の女の子は、せかさずに見守る。
全員が食べ終えると、就寝に向け順番に歯磨き。
小さい子は保育士が磨く。

7時55分 乳幼児のおむつ替え。
部屋にずらりと布団を敷くと、
子どもたちは自分たちで布団に向かった。

8時25分 「ママー」と泣く女の子の胸を、
勝又さんがトントンと優しくたたく。
しばらくすると、寝息に変わった。

9時05分 騒がしかった園内はようやく静かに。
食器の片付けや翌日の給食の数のチェックをする。

翌午前0時 仕事を終えた親たちが子どもを迎えに来る。
保育士は勝又さん一人に。

1時22分 一歳半の男の子を母親が迎えに来た。
「この時間まで預かってくれるのは助かる。
たくさんの子にもまれて成長してくれている」。
寝ぼけ眼の息子を見てにっこり。

1時47分 ダウン症の女児も迎えが。
「ずっと二人で暮らしてきた。
ここがないと仕事ができない」と母親。

2時35分 最後に七カ月の女の子を迎えに来た母親。
目を覚ました子どもに優しくほほ笑みかける。
ベビーカーに乗せ「おやすみなさい」と帰った。

前日正午ごろ出勤し十四時間以上働いた
勝又さんは、やっと休息の時間。
仮眠を取り午前中の勤務に備える。



「ぴーかぶー」は、元看護師の古賀真琴さん(34)が
二〇〇三年に設立した。
自身も働く母として「子どもがいなかったときと
同じ働き方を続けてほしい」と、
ライフスタイルによって異なる保育時間に合わせた
サービスを提供しようとの思いだった。
社長を務めながら三歳と七カ月の
子どもを預ける利用者でもある。

認可保育所は規制が多く、
急な保育や自由な時間に給食を出すといった
対応ができないため、無認可保育所として運営する。
行政からの支援を受けたいとも思うが
「支援を受けるよりも、自由な運営を重視しました」と古賀さん。
保育士五人とボランティアで昼と夜の保育を回している。

<認可外保育所> 厚生労働省によると、
2010年度で全国に7578カ所。
うち午後8時以降の保育、宿泊保育、一時預かりが半数以上、
のいずれかを常時運営している施設は1709カ所。
1044カ所だった00年度から増加傾向にある。
一方、認可された夜間保育所は06年度で69カ所で、
低い水準で推移している。
------------------------------------------------