弁護士課長、児相の力に


YOMIURI ONLINE
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福岡市こども総合相談センター(児童相談所)の
こども緊急支援課長に、弁護士の男性(44)が
就任して2年目に入った。
親の同意なしに子どもを一時保護する「職権保護」の導入や
親権を最長2年間停止できる改正民法の施行など
法的知識が求められるケースが増える中、
「弁護士が児相で働く有用性を、多くの自治体に示したい」と、
虐待など様々な事案への対応に
職員とともに汗を流している。(饒波あゆみ)

過去に家庭裁判所書記官として、少年事件などを担当。
「経験を生かしたい」と昨年4月に課長に就いた。
職権保護時の立ち会いや、
家裁への申し立て書類の原案作成などを行っている。

「親権とは子どもに対する親の権利ではなく、養育する責任。
子どもの利益を考えない親権の行使は認められない」
「職権保護の際、保護者が職員に携帯電話を投げつけた。
当たらなくても、これは公務執行妨害になり得る」

センターの全職員向けに、昨年7月から週1回程度、
法律解説や対応例を発信している。
ある職員は「親権を主張する親に萎縮してきたが、
親権は子どものために行使するものだと分かり、
自信を持って対応できるようになった」と強調する。

「親権があるのになぜ子どもに会えないのか」と迫る
親たちへの対応も重要な仕事だ。
法律家として親権の意味を丁寧に説き、
理解を得るように努めている。

センターによると、2008年度に29件だった
市内の職権保護は、09年度47件、10年度は70件と
急増している。
職員の負担増も懸念される中、
同課で同じく課長を務める男性(60)は
「親との話し合いに同席してもらうと安心感が持てる」と語る。

対外的にも、県内の児童福祉司の会合で、
改正民法の概要や親権停止の
申し立てができる事例を解説した。

同じように自治体職員として働く弁護士や
自治体関係者が集まる座談会やシンポジウムにも出かけ、
経験を広めている。
「児相には多くの役割があり、職員が抱える事案も多い。
こうした課題を発信し、解決につなげたい」と話している。
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