盲目犬「光」戻った/園児たちの声“奇跡”紡ぐ


SHIKOKU NEWS
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獣医師から、「目が見えなくなっている」と診断された
大型犬のゴールデン・レトリバーが、
保育所から聞こえてくる園児たちの笑い声に触れる中で、
徐々に光を取り戻す兆候を見せる“奇跡”を紡ぎ出し、
関係者らに感動を与えている。

犬の名前は「レッド」。
生後間もなく香川県土庄町の競輪選手児玉広志さん(42)、
志乃さん(36)夫妻の元にやってきた。
順調に育っていたが、生後5カ月となった2010年夏、
両目が閉じた状態になり、動物病院を受診した結果、
下された診断は「先天性の異常があり、
脳が腫れて視神経を圧迫して見えなくなっている」。
別の動物病院では「安楽死」を勧められたという。

児玉さん宅は高台にあり、近くには土庄保育所がある。
視力を失ったレッドは、
園児の笑い声や歌声を楽しむかのように、
ベランダから保育所の方に耳を傾けるのが日課に。
やがて園児らもその姿に気付き、
目が見えていないとは知らず、
保育所から手を振って、
大きな声でレッドを呼ぶようになったという。

そんな日々が半年ほど過ぎた10年12月、
レッドがぱっちりと目を開け、動くものに目を反応させた。
志乃さんは動物病院に連絡したが、
獣医師たちは半信半疑で
「信じられない」と一様に驚いたという。

志乃さんは、「子どもたちには奇跡を起こす、
すてきな優しい力がある。そのことをぜひ伝えたい」と
これまでの経緯と感謝の気持ちを
手紙で子どもたちに伝えた。
保育士の須藤有紀さん(30)らは
手紙を園内に張り出し、園児と共に
「レッドありがとう!」とのメッセージを書いた
パネル写真を持って児玉さん宅を訪問。
園児らはその後も散歩の際に立ち寄り、
レッドと交流を深めた。

レッドは現在も、元気に庭を走り回っている。
当時を振り返り「奇跡というのは、
人との結びつきや強い思いが
起こすものだと思う」と児玉夫妻。
「レッドのことを知った人が、
ほんの一瞬でも温かい気持ちになってくれたら幸せです」。
志乃さんはいつかこの「奇跡の物語」を絵本にして、
子どもたちに伝え、恩返ししていきたいと考えている。
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