路上で涙・上着なし…幼い兄妹のSOS届かず


YOMIURI ONLINE
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東京都江戸川区の民家で6日、
小学生2人を含む家族4人が無理心中を図り、死亡した事件。

子どもたちや親族、近隣の住民は
何度も“SOS”を発していたが、
行政側は幼い命を守ることができなかった。

専門家は「行政がもっと踏み込んだ対応をしていれば、
事件を防げたはず」と指摘している。

親族によると、亡くなった小学4年の男児(9)と小学2年の女児(7)が、
母親(28)らとともに江戸川区で暮らし始めたのは昨年9月。
父親(34)の不動産会社への転職に伴い、
福岡県から引っ越してきたという。

区などによると、 男児は社会科見学などの
学校行事に興味を示し、女児は縄跳びが得意だった。
すぐに学校になじんだが、 母親の精神状態が不安定になり、
子どもたちも次第に休みが目立つようになったという。
昨年12月には、寒い中、上着も羽織らずに、
路上で泣く 男児 の姿を住民が見掛けていた。

今年1月には、父親が仕事上のミスを苦に自殺。
近所の女性が先月、2人だけで手をつないで
犬の散歩をしているのを心配に思い、
「お母さんは?」と尋ねると、
「お母さんは具合が悪いので
2人でお散歩しているの」とさみしそうに話していたという。

1か月後、同居していた母親の兄(29)を含む4人は
練炭入りの七輪を自宅室内に置いて心中を図り、
幼い2人も犠牲になった。
女性は「子どもたちは母親の話になると
暗い表情を浮かべ、やつれているように見えた。
あの時、何かできたんじゃないかと考えてしまう」と悔やんだ。

子どもたちの様子に不安を感じた近隣住民は
昨年12月下旬、区子ども家庭支援センターに
「子どもたちが心配」と連絡。
父親の自殺後、2人の世話をしていた
千葉県に住む父方の祖父(64)も
同センターに相談していた。
祖父は「母親は『つらい』『死にたい』と漏らすし、
育児ができる状態ではなかった」と話す。

両親が育児をできない場合、
児童相談所は児童虐待防止法に基づき、
自宅への強制立ち入りや
子どもを一時保護することができる。
しかし、今回は、センター職員が2~3月に3回、
自宅を訪問しただけで、
児童相談所には通報していなかった。
その理由について、センターは「母親に会えず、
子どもへの虐待や育児放棄(ネグレクト)を
確認できなかった」と説明した。

事件3日前には、 母親宅で練炭によるボヤ騒ぎがあり、
近所の住民が消火に当たったが、
相談に乗っていた区側に情報が伝わることもなかった。

児童虐待問題に詳しい関西学院大の才村純教授は、
「区は児童相談所と連携するなど、
もう一歩踏み込んだ対応をすべきだった。
行政側は、再発防止のために問題点を
十分に検証する必要がある」と話している。
(神園真由美、森田啓文)
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