虐待「止められない」現場の苦悩 「休日がたまらなく怖い」


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凄惨な児童虐待事件が明るみに出るたび、
「加害者」とともに激しい非難の対象になるのが、
虐待を「止められなかった」
保育園、小学校、児童相談所などの関連機関だ。
「どうして見て見ぬふりをしたんだ」
「助けられたはずだろう」

しかし、リーダーズノート出版から
2011年に刊行された『誰か助けて 止まらない児童虐待』(石川結貴・著)を読むと、
ことはそう単純ではないことに気づく。
以下は本書に収められた、ある保育園での一幕だ。


――晃君は毎日新しいアザを作って登園してきた。
小さな体のあちこちに、赤、青、茶色のアザが
まだら模様で混在する。
保育士たちは到底正視できず、
焦りと不安が高まる一方だ。

「子ども家庭課はまだ児童相談所に
通告してくれないんですか」
「どうして私たち保育園は
勝手に動くなと指導されるんですか」

職員会議で若い保育士たちは息巻くが、
むろん主任保育士や園長も同じ思いだった。
それでも現実、上層部の指導を
無視するわけにはいかないのだ。
「とにかく今、私たち職員でできることを
なんでもやりましょう。
お母さんが晃君に暴力をふるう
原因になるようなことは極力減らしましょう」(中略)

それでも、主任保育士には「恐ろしい日」があった。
休日だ。保育園が休みの日は、
唯一できる見守りさえ不可能になってしまう。

休日の自宅は晃君とお母さんだけ、
ストレスをためたお母さんが
激しい虐待をするのではないか、
そう考えるとたまらなく恐ろしかった。――


現場の人間が子どもたちの「SOS」に気が付いていても、
実際には行政システムや法律の壁、
認識の差などによってなかなか
救いの手を差し伸べられない現実がそこにはある。
こうした「虐待」の実態を取材によって
明らかにした本著に、学ぶべきところは多い。
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