児童虐待…深刻化前に通報増


朝日新聞
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◆相談件数 過去最多

昨年度の岐阜県内の児童虐待相談件数が
前年度より69件多い741件に上り、
統計をとり始めた1990年度以降で最多だったことが
県のまとめでわかった。
地域の連携強化で、早い段階での通報が増えたことなどが
影響したとみられる。
一方、通報の増加に伴う態勢の整備が課題となっている。


◆態勢強化に課題も

県子ども家庭課によると、虐待行為別では、
身体的虐待が299件(40・4%)と最多で、
食事や世話をしない育児放棄(ネグレクト)が236件(31・8%)、
心理的虐待が187件(25・2%)だった。
 虐待を受けた子どもの年齢別では、
小学生が307件(41・4%)と最も多く、
死亡につながりやすい3歳未満も109件(14・7%)。
虐待していたのは実母が463件(62・5%)と最多だった。

「父親の育児への協力が不十分な場合が多い」(同課)という。
 親元から離して施設に入所させたケースは
前年度と同じ65件と横ばい。
同課は「世間の関心が高まり、
関係機関の連携による効果で、
深刻化する前段階での通報が増えた」と分析する。
 一方で、相談の受け入れ態勢の強化が課題となっている。
相談があれば児童相談所(子ども相談センター)は
原則48時間以内に、子どもの安否を確認しなければならない。
実親と対立するなど対応の難しいケースも多い。
職員一人ひとりが抱える件数は増えるが、
県が職員数を抑制するなか、
親などからの相談を受ける児童福祉司の数は35人と、
2009年度から増えていない。
 担当者は「相談機関を周知して
子育て家庭を支える雰囲気をつくり、
虐待に対応する態勢を充実させていきたい」としている。
 また、相談件数とは別に、児童養護施設や
里親に預けられた子どもが虐待されているとの通報も3件あった。
1件は虐待と認められなかったが、残りの2件は調査中だ。
虐待があった場合は、施設に改善を勧告・命令したり、
里親資格を取り消したりするなどの措置を講じるという。


◆「地域一体の子育て大事」…中央子ども相談センター所長・板津さん
 相談件数が過去最多だったことについて、
県中央子ども相談センター所長の板津茂充さんは
「虐待そのものが増えているのも要因。
核家族化が進み、子育てが孤立化している」とみる。

「イクメン」という言葉に代表されるように
育児に前向きな父親が増えてきた。
だが、板津さんは「育児を母親に任せきりの家庭もある。
母親を追いつめ、虐待につながっているのではないか」と指摘する。

近年、重大な虐待事件が報道されたことや
24時間対応の通報ダイヤルができたことも挙げ、
「救える命を救いたいという認識が高まり、
態勢が整い連絡が入りやすくなった」と言う。
 虐待を防ぐ手立てはないのだろうか。
 板津さんは「子育ては楽しいだけではなく、苦労も多い。
どうしていいのかわからなくなることもある。
そういうときこそ、別の人が交代してあげると楽になる。
地域と一体となった子育てが大事」と話す。
 さらに「虐待は親子だけでは解決できない。
第三者が入ることで修復できる」とし、
早めの通報や相談を呼びかけている。(塩入彩)


■24時間虐待通報ダイヤル
中央子ども相談センター(058・273・1125)
西濃子ども相談センター(0584・78・4866)
中濃子ども相談センター(0574・25・3350)
東濃子ども相談センター(0572・23・1226)
飛騨子ども相談センター(0577・32・0611)
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