沿岸の4幼・保 内陸部に統合 山武市が津波対策


東京新聞
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平たんな沿岸部が広がる九十九里浜の真ん中に位置する
千葉県山武市で、海岸近くにある四つの幼・保育園を、
内陸部に移設する計画が急ピッチで進む。
東日本大震災で津波の脅威を目の当たりにし、
子どもたちを津波被害から守ろうと、
震災後に計画が一気にまとまった。
「認定こども園」として統合し、
最大で高さ9.6メートルの津波を想定した対策を講じる。
避難場所は1次、2次の2段階に分け、
来年4月の開園予定だ。

移設・統合されるのは、
いずれも市立で緑海保育所と緑海幼稚園、
鳴浜保育所と鳴浜幼稚園。
海岸線から最も近い緑海保育所で一・二キロ、
最も離れた鳴浜幼稚園でも、
三・二キロほどしか距離はなかった。
四施設に計約百七十人(四月時点)が通っている。

昨年の震災時は、津波による浸水にはいずれも至らなかった。
だが、震災直後は余震のたび、
津波への危惧から緑海保育所の子どもが
近くの緑海小に避難することが何度かあったという。

四施設はもともと、老朽化のため再編計画があったが、
移設先などの合意が関係者でなかなかまとまらなかった。
しかし、震災後は津波への懸念が強まり、空気が一変。
昨年五月に行ったアンケートでは、
六~七割の保護者が「今よりも多少遠くなっても
早く整備してほしい」という意見になった。

津波被害を避けられ、しかも早期に移設可能な適地は、
鳴浜地区の最も内陸側にある
市有地(同市白幡)しかなかったという。
海から五・二キロ離れ、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ
「認定こども園」として、昨年秋に移設が正式に決まった。

×  ×

新たな「しらはたこども園」(仮称)は、
約九千五百平方メートルの敷地に
鉄筋コンクリート二階建て、
延べ床面積は約二千五百平方メートル。
千葉県東方沖でマグニチュード(M)8・9の地震が起き、
海岸に最大で高さ九・六メートルの津波が
来ることを想定し、設計された。

このシミュレーションでも施設に津波は届かないが、
それでも最大二メートルの津波に襲われる
最悪のケースを想定した。
園舎には二階部分に高さ三・五メートル、
五百平方メートルの一次避難場所を設けた。
さらに高さ五・五メートルの屋上部分には、
二百九十平方メートルの二次避難場所を確保。
乾パンや水、毛布などを備蓄する防災倉庫も置く。

保護者の懸念を払拭(ふっしょく)するため、
来年四月の開園に間に合わせる突貫工事。
総事業費は約八億七千万円。
「はじめは間に合うのかなと思った」(市担当者)というが、
週内に造成工事が始まる予定だ。

×  ×

県によると、津波対策の一環で、
海岸部にある幼・保育園の移設を決めたのは今のところ、
山武市しか聞いていないという。

ただ、外房や南房総地域では今後、
幼稚園や保育所の再編計画を持つ自治体も多く、
「計画が進む中で、山武市と同じような(移設の)話が
出てくる可能性はある」(担当者)としている。
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