“赤ちゃん先生”高齢者施設や教育現場へ派遣 認知症改善、育児への喜びも


SankeiBiz
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赤ちゃんを見ると、思わずほほ笑み心が和む。
そんな赤ちゃんがもつ力、
「共感力」を生かそうと、赤ちゃんに「先生」になってもらい、
高齢者施設や学校に派遣する取り組みが進んでいる。
赤ちゃんとふれあった認知症の高齢者の
表情が和らぐなどの効果も現れ始めている上、
赤ちゃんを連れていった母親たちも
「育児への喜びや誇りを感じる」と好評だという。
(横山由紀子)

ほころぶ顔、顔、顔…

「赤ちゃんの小さな手や足は
ほんまにかかわいねえ」
「寝顔を見ているだけでも幸せ」-。

今月7日、神戸市垂水区の有料老人ホーム
「グッドタイムリビング神戸垂水」。
母親に抱っこされた0歳児3人を前に、
80~90歳代の入居者6人が顔をほころばせた。
「ばあ」と赤ちゃんに話しかけたり、そっと手を握ったり、
赤ちゃんを抱っこしながら「50年以上前の
子育てをしていた頃を思い出すわ」と涙ぐむ女性も。
赤ちゃんもご機嫌な様子。あっという間に1時間が過ぎた。

この企画を主催したのは、
NPO法人「ママの働き方応援隊」(神戸市中央区」)。
子育て中の母親が働きやすい社会を目指す同法人は、
子連れで参加できる社会参画セミナーや
シンポジウムなどを開催。
1990年代頃からカナダで、
「ルーツ・オブ・エンパシー(共感の根)」という
赤ちゃんが学校を訪問する
学習プログラムが盛んになっていることを知り、
子供と一緒に社会参画できる取り組みとして昨冬から始めた。

高齢者施設の訪問では、赤ちゃんが登場すると、
ほとんど表情のなかった高齢者が笑顔を見せたり、
記憶力が著しく低下している認知症患者が
「赤ちゃんがかわいかった」と
しばらく覚えていて話題にするなど、
目に見える効果があったという。

母親たちにも評判がいい。
生後5カ月の男児と老人ホームを訪れた
女性(33)=兵庫県姫路市=は、
「息子と一緒に社会活動に参加でき、
お年寄りの方々の力になることにやりがいを感じる。
子育ての大先輩からの意見も参考になる」と話す。

消極的だった学生にも変化が

同法人では、赤ちゃんを通して
若者に命の大切さを学んでもらおうと、
教育機関にも「赤ちゃん先生」を派遣している。
通信制高校のサポート校
「KTC中央高等学院神戸キャンパス」(神戸市中央区)には
毎月、同じ赤ちゃんと母親が訪問。
ふだん消極的な学生が、
自分から身を乗り出して赤ちゃんに話しかけるなど、
変化が見られるという。

「ママの働き方応援隊」恵(めぐみ)夕喜子理事長は、
「赤ちゃんと若者や高齢者が触れあって、
地域社会がつながることで、
無縁社会の解消など日本社会の
課題解決も目指したい」との思いを抱く。
今後は「単なるボランティア活動でなく、
子育て中のお母さんたちの仕事の場として、
事業展開していきたい」という。
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