京王電鉄の「沿線価値向上」に向けた取り組みを取材しました。


FNNニュース
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人口の減少にともない、電車の利用者が年々減ってきている中、
鉄道各社が、本業とは別の事業に次々と乗り出しています。
「縮む日本」に挑む、沿線活性化計画を取材しました。

4月にオープンしたばかりの広々とした保育所
「京王キッズプラッツ東府中」で、元気に遊ぶ子どもたち。
そんなわが子の様子に目を細める母親が、
この保育所を選んだ理由は、新しさや広さだけではない。
京王キッズプラッツ東府中を選んだ理由について、
母親たちからは、「やはりこの便利さ」、
「この便利さですかね」、
「わたしにとっては助かっております」
との声が聞かれた。
この保育所があるのは、いわゆる「駅ナカ」。
改札口から歩いてわずか20秒ほどという近さが人気で、
0歳児と1歳児は、すでに定員に達しているという。
京王キッズプラッツ東府中に子どもを預ける母親は
「やっぱり、電鉄会社というところで、
非常に信頼があるなと思って」と話した。
保育所を運営するのは、「京王電鉄グループ」。
京王電鉄は、2007年から子育てサポート事業に乗り出し、
現在は、駅前や駅ナカなど、
沿線6カ所に保育所を展開している。
1950年代半ばから1970年代初めにかけ、
関東・関西都市圏の私鉄沿線各地には、
こぞって住宅が開発・分譲され、
鉄道利用者は増加の一途をたどった。

しかし、少子高齢化などにより、
1991年度をピークに減少に転じ、
一時回復傾向を見せるも、ここ数年は再び減少。
京王電鉄の利用者も、2008年度を境に、
右肩下がりの状態となっている。
京王電鉄事業推進部・島田 忠課長は
「輸送人員が減少していく中で、
沿線価値の向上を進め、
安定的な経営を図っていきたいと考えております」と話した。
利用者は「自然増」の時代から「集客」が必要な時代に、
ビジネスモデルの転換を迫られることとなった私鉄。
京王電鉄は、2005年に100人規模のチームを結成し、
社運をかけた「沿線価値向上プロジェクト」を始動した。
「駅ナカ保育所」も、その一環となっている。
一方、家に上がるや否や、エプロンをまいて
掃除機を組み立て始めたのは、京王電鉄のスタッフ。
これは、家主に代わって、
掃除などの家事を行う「家事代行サービス」。
京王電鉄の家事代行サービススタッフは
「(置いてあるものは元の位置に戻す?)お客様自身が
お使いになっていらっしゃるものは、
あまり勝手に片づけたりはしないで。
ご希望にあわせたお掃除をするようにしています」と話した。
沿線価値向上のための次なる一手は、
高齢者向けの生活支援サービス。
「京王ほっとネットワーク」と銘打ち、
2008年から沿線住民を対象に、家事代行のほか、
外出時のつき添いや、買い物の配送なども行っている。
京王電鉄の家事代行サービス利用者は
「来てくださることによって、僕も一生懸命働けるわけ。
そうしないとね、なかなか(掃除を)『しない』というか
『できない』というか。すごく時間も助かるし、
片づくことも助かるし」と話した。
保育所や高齢者向けのサービスによる収益は、
鉄道事業に比べれば、ほんのわずか。
しかし、私鉄各社は今後、
さらにこうした事業展開を迫られることになるという。
日本民営鉄道協会の柚木浩一常務理事は
「鉄道の『お客様を運ぶ』という柱に加えて、
やはり、地域をより魅力あるものとすることによって、
総合的に鉄道の経営を進めていくという方向に、
ますます進んでいくものと思います」と話した。
「住んでもらえる、選んでもらえる」沿線になるため、
住民の囲い込みは、人口減という現実と並走している。
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