拾う 子どものSOS


朝日新聞
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◆いじめの悩み 手紙で交換

いま、家や学校で困っていることはありませんか?
鳥取地方法務局はこんな呼びかけで、
身近な人にも打ち明けられない子どもたちの悩みを拾い上げる
「子ども人権SOSミニレター」作戦に取り組んでいる。
2006年から始め、これまでに550通を超す手紙が寄せられた。
一通一通に人権擁護委員が手書きで返事を書き、
子どもたちの声にこたえている。

「いま、いじめられています」「友達と仲良く話せない」

A4サイズの便箋(びん・せん)にびっしりと書かれた文字。
そこには子どもたちの切実な叫びがいっぱいだ。
いじめなど友達との人間関係に悩む手紙が大半だが、
最近は両親からの虐待や育児放棄を
ほのめかす内容も含まれているという。

ミニレターは山口地方法務局が1996年、
大人や教師の目が届かないところで起きている
「いじめ」を掘り起こし、自殺など深刻な事態に陥る前に
解決しようとしたのが始まり。
いじめや不登校が社会問題化する中、
聞き取りや面接では教師や親の目を気にするためか、
なかなか子どもたちの生の声を
拾い上げることができなかったという。

その後全国に広がり、鳥取地方法務局も始めた。
毎年秋、県内すべての小中学校に全児童・生徒分の便箋を配り、
これまでに556通、2011年度では113通が寄せられた。
手紙には元教師や弁護士、住職や民生委員といった
様々な肩書を持つ人権擁護委員が丁寧に返事を書き、
また子どもたちが返事を書けるよう新しい便箋も送る。
ミニレターをきっかけに、文通が始まることもあるという。

元鳥取短期大学の非常勤講師で、
県人権擁護委員連合会副会長の池本道子さん(64)が、
これまで手紙でやりとりした子どもは10人ほど。
多くがいじめに悩んでいたという。

子どもたちが勇気を出して送ってくれた手紙。
返事を書くときは、大人からの押しつけにならないよう、
一言一句に気をつけた。
池本さん自身、小中学生の頃にいじめの加害者にも
被害者にもなったという。
一人っ子で年の近い友達との関わり方が分からず、
学校の休み時間、図書館に引きこもり
本ばかり読んでいたことも。
その経験も手紙にしたためている。

「悩みはみんなが抱えている。
悩みを持つことは恥ずかしいことではない。
ひとりで抱えきれない悩みでも、
誰かに打ち明けることで軽くなることも多い」

親世代には語気を強めて注文する。
最近は職場での人間関係に悩み、
心のゆとりを保てず親子関係がぎすぎすすることも多いが、
「親に冷たくされると、
子どもは孤独感に苛(さいな)まれ、
家庭での不満がいじめの要因にもなる。
ほめてほめて、子どもの人格を認めてあげてほしい」。

ミニレターについての問い合わせは
鳥取地方法務局人権擁護課(0857・22・2470)へ。(宋潤敏)
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